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湧水「全量戻し」焦点 国リニア有識者会議、きょう中間報告

2021年12月19日 05時00分 (12月19日 05時02分更新)
 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事(静岡市葵区)を巡る国土交通省の有識者会議は十九日、大井川の水資源に関する中間報告を取りまとめる見込みだ。これまでに示されている報告の案は、中下流域を流れる水や地下水への影響は少ないとするJR東海の主張をおおむね追認。静岡県や流域十市町が「着工の前提」とする、工事で発生する湧水全量を静岡県へ戻す「全量戻し」の方策は示されていない。案から大きな変更はないとみられ、県の見解との隔たりは埋まらず、膠着(こうちゃく)状態が打開される見通しはついていない。
 会議は昨年四月の第一回以降、トンネル掘削や湧水の県外流出による大井川流域の流量、水質への影響などについて検討。三月の第十回会議で中間報告の素案が示され、委員の意見を踏まえ修正してきた。
 これまでに示された中間報告の案は、工事期間中に湧水が県外流出しても中下流の流量は維持されること、中下流域の流量が維持されることで地下水量への影響は極めて小さい、などとしている。
 これらの基になったのは委員の求めでJR側が提出した新資料で、トンネル工事による地下水位の変化の予測や上流、水の成分から地下水の流れを分析した実測データなど。JRは調査結果などから、中下流域の地下水の供給源は上流ではないため、上流の水量が減っても地下水への影響は極めて小さいとの考察を示し、有識者会議は大筋で認めた。
 JRが工事によって山梨県側に流出する湧水量が最大五百万トンとの予測値を公表した際も、座長コメントで「湧水が山梨県側に流出しても(導水路の出口がある)椹島(さわらじま)より下流(の大井川中下流域)では河川流量は維持される」との見解を示した。
 これに対して、県の有識者会議(中央新幹線環境保全連絡会議)は「椹島の河川流量の評価で、さらに下流の流量を評価するのは正確性を欠く」と指摘。県は「科学的・工学的に正確性を欠いた見解を持つのは看過できない」などと、抗議する意見書を国交省に提出したが、これまでの報告案では修正には至っていない。
 一方、県外に流出する湧水を巡り、JRは工事後に県外流出分と同量の水を十二〜二十年かけ、静岡県側に戻すことを提示。県は反発したが、報告案では「工事中も県外流出する湧水を戻さなければ、県の言う全量戻しにはならない」と認めたものの、JRは他の方策を示していない。
 十九日に中間報告がまとまれば、県の有識者会議に議論が戻され、県とJRが対話を再開。国の有識者会議では生態系への影響の議論に移る。

<国土交通省の有識者会議> リニア工事による大井川の水量、水質への影響や対策について、県の有識者会議にあたる静岡県中央新幹線環境保全連絡会議での県とJRの意見が隔たり、協議が進まない状況を受け、国交省が提案し、2020年4月に立ち上げた。同会議の委員2人を含む水文学や地下水学、トンネル工学などの専門家7人が参加。工法や対策を評価した上で、工事影響の回避、低減策を探り、分かりやすく説明できるようJRを指導する場とされ、「水資源」「生態系」の順で議論する。水資源ではこれまで12回実施。


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