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女のティールーム

豆ご飯 無事願う おまじない

主婦 江端 芳枝さん(磐田市)

水彩連盟準会員 福沢益由己

写真

 家族が一泊以上で家を空ける日の朝食には、豆ご飯を炊く。まめに出掛けてまめに帰ってくるように、というおまじないである。

 普通に炊きあげたご飯にあらかじめ軟らかくゆでておいた小豆を混ぜるのだが、小豆が絡みやすいようにもち米を二割ぐらい混ぜて炊く。お赤飯のように米を染めないので、白く光ったご飯に小豆のえんじ色がくっきりと浮かび、とてもきれいだ。いつもと違う日が始まるわくわく感が湧いてくる。

 炊きあがったご飯に小豆を混ぜていると「何事もありませんように」と言いながらしゃもじを使っていた祖母を思い出す。学校行事で九日が出発日になったときは、大騒ぎだった。「出るな九日、戻るな七日」ということわざを固く信じていた祖母は「先生は(ことわざを)知らんのかねえ」と愚痴を言いながらご飯に小豆を混ぜるときも茶わんによそう時も幾度となく「何事もありませんように」と呪文のように言っていた。

 私がふざけて「今日は九日だよ」と言って出掛けようとすると、門口まで追い掛けてきて「よっちゃんが出掛けたのは九日じゃない」と真剣な顔をして言った。

 嫁いだ娘から電話があった。「じいじとばあば、今朝旅行に出掛けたよ。朝早いからご飯いいよって言うもんで、豆ご飯をおにぎりにして持ってってもらった」

 受話器を持つ手と、娘の声を聞いている耳がほわんと温かくなった。

 

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