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女のティールーム

母とビニール袋 時間保つ 日常の手間

無職 池田 きくえさん(牧之原市)

書家・画家 重富希公子

写真

 正月明けに岐阜県の実家に行った。東京から妹も来ていて久しぶりの再会。母はもう九十歳近いが、畑で野菜を作り、家事も現役でこなしている。

 ふと納屋に行ってみると、洗濯バサミに二十枚ほどの洗ったビニール袋が下がっている。まぁいつもの風景ではある。

 その夜、妹が「袋なんて百円ショップでいくらでも売ってるから、洗って使うなんて時間のムダだよ」と母を説得していた。体を少しでも楽に過ごしてほしいからの言葉であり、確かに私も同意見ではある。妹はそれを「ビニール・コンプレックス」と呼んでいた。物が乏しい時代を通った母たちには共通する気持ちだろう。その思いも痛いほど分かるので、私はあえて黙って聞いていた。

 実家からの帰りの電車内でいろいろ考えた。確かに安くて何でも手に入るこの時代だが、衣服を手直ししたり、ビニール袋を再使用する「手間」を仕事の一つとして日常に組み込む事で、母の「時間」は保たれているに違いないと思い至った。

 お金や効率ではない確かな行為で。

 

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