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女のティールーム

正月のリポート 母思い、自分らしさ挑戦

主婦 山本 千秋さん(静岡市葵区)

書家・画家 重富希公子

写真

 昨年十月末に母が他界したので、正月飾りもせず、実家に伺うこともしなかった。そんな中、大学で哲学の授業を聴講している私には課題がある。

 学生は課題図書を読みリポートを書くことが課せられている。単位を求めない私には義務はないのだが、挑戦しようと元日に営業している本屋に行った。

 シニア女子が正月早々岩波文庫の棚を探し回るのも何か変?他にやることはないのかと誰かに同情されそうな気もする。子や孫たちが来てにぎやかにすごす人が多い中、やはり異様かもしれない。もっとも子も孫もいない私にはその図は初めからないが。

 さて、書店では、目がしょぼついて良く見えない情けなさ。二軒回り、ようやく数冊の課題本の中で一番敬遠されそうなニーチェの書を見つけた。とりあえず購入し、早速読み始めたが、予想以上の難しさ。

 何だいこれは?翻訳が悪いのではないか?著者の頭はどうなっているのだ?と、自分の頭の悪さを棚に上げ、いろいろと他人のせいにする。

 こんな本の要約なんか書けない!柔軟な頭脳の学生たちは一旦(いったん)緩急あれば(何という古い表現)単位取得のために奮起するだろう。自分も学生のころは読みこなせたのだろうか?と振り返る。

 ギブアップしそうだが、意地でも読了し、何とかリポートらしきものを書こう。私は子どものころから、正月でも家族たちとにぎやかに過ごすより部屋で本を読んだり、思考したりするのが性にあっていたのだから、こんなおばさんがいてもいいではないか。

 九十三歳で静かに幕を閉じた母は私とは全く異なった性だった。母を思いながら、自分らしいこの先に思いをはせている。

 

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