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女のティールーム

猫がくれたもの 幼い日 温かい思い出

主婦 日比野法子さん(愛知県愛西市)

水彩連盟準会員 福沢益由己

写真

 思い通りに事が運ばず、気持ちの晴れない日だった。何となくテレビをつけると、太った猫が小さな箱に無理やり入り、おかしな顔で寝ているさまが写った。ふっと心が軽くなった瞬間、遠い日の猫との思い出がよみがえった。

 小さな島で育った私のそばには、いつも猫がいた。漁業を営む家がほとんどで、漁船がエンジン音を響かせ港へ戻ってくると、魚のおこぼれを目当てに猫たちが集まった。潮風が猫の毛をなで、上空をトンビが舞っている。そんな風景が大好きだった。

 そして私には、他にも好きなものがあった。金髪で青い目の、当時はやりのお人形。毎日遊ぶ私を見て、九歳上の兄が木切れで人形のベッドを作ってくれた。母がそれに合わせて花模様の布団を縫ってくれたのがうれしくてたまらなかった。ところがある日、学校から帰ると寝かせておいたはずの人形がベッドから転げ落ちていた。

 犯人はすぐに見つかった。飼い猫のミーコが人形の髪にツンツンと爪を立てて引きずり出し、自分がベッドに上がって丸くなっていたのだ。太っちょの体はずいぶんとはみ出していて、母と涙が出るほど笑った。

 猫からもらったものは温かいのに、恩返しできずにいる。保護センターで飼い主を待つ猫たちに幸せが訪れるように手を合わせた。

 

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