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静岡経済 ヒットの系譜

ヤマハ発 スクーター「パッソル」

◆独創力で新風起こす

女性に親しまれるデザインでブームを起こした「パッソル」と、デザイン本部立体デザイン部の沼田部長=磐田市のヤマハ発動機本社で

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 女優の八千草薫さんが足をそろえて乗るテレビコマーシャルで、ブームが巻き起こったヤマハ発動機のスクーター「パッソル」。スカートをはいた女性が楽に乗れるデザインのスクーターは、いかにも二輪車に乗れなさそうな女優を起用したコマーシャルでブームに火が付いた。三十五年ほど前の一九七七年のころだ。

 ヤマハ発がパッソルに取り入れた足を載せる場所を平板なデザインにした「ステップスルー」は当時、画期的なデザインだった。男性が乗るエキサイティングな乗り物のイメージが強かったバイクに、女性が気軽に利用できるという新しい風を吹き込んだ。

 家電や自動車のメーカーからデザイナーをかき集めた、ヤマハ発のデザイン専門の子会社「YAC」が、デザインを手掛けた。

 三十年以上、ヤマハ発のスクーターのデザインに携わってきたデザイン本部立体デザイン部の沼田務部長(56)は、「常に先を走り、守りに入ってはいけない」と、ヤマハ発の底流にあるデザインの精神を語る。時代のトレンドをつくるために、“独創”を心掛けなければならない。

 これは、ヤマハ発の稼ぎ頭である東南アジア諸国連合(ASEAN)地域での二輪のデザインにも踏襲されている。アセアン戦略モデルの中核となっている「Mio」シリーズは、二〇〇三年に初代が発売された。

 企画段階では、アセアンモデルに広い収納スペースやステップスルーを採用することへの疑問も投げかけられた。しかし、十人のうちの一人が魅力を感じた「希少」なものからヒットが生まれることもデザインの面白さだ。

 Mioシリーズでレトロ感を打ち出した「FINO」は、タイで人気を博した。上昇志向が強いASEANでは古いものは嫌われるという定説があったが、バイクの商品企画を担当する瀬川直樹さん(38)は、「タイでは古いものを好む風潮が見えてきた」という。プミポン国王を今も敬愛するタイ国民は、古きを大事にした上で、新しさを求める機運も根強い。

 新しいデザインを好むタイ、鋭さやスポーティーさに人気が集まるインドネシア。ASEAN諸国にはそれぞれの国を特徴づけるトレンドがあるが、単純にその国の好みに合わせてもヒット商品は生まれない。ヤマハ発が全世界でこれまでに積み重ねてきた造形のセンスを振り返りながら、新製品を企画していく必要がある。

 沼田さんは「生活に根ざしながら、高い情感の表し方を考えていきたい」と語る。製品デザインは、生活をより豊かにするための技術でもある。

(白山泉、写真も)

 

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