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掛川西高100周年 天守の杜に

第3部 人物史編 地域のために

潤いある暮らし支援 報徳の心脈々と

施設や教会など各地で入場無料コンサートを開いている天方吹奏楽団=浜松市内の教会で

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 勤勉と倹約が人々の生きる道だと主張し、江戸末期の疲弊した農村の再建と家産再興を図った報徳思想。それを率先垂範した二宮尊徳(金次郎)は身長が一八二センチもあったと伝えられる。当時の平均身長から言えばかなりの大男で、荒れ地にくわを振るう尊徳の行動は、当時の農民の注目を集め説得力があった。

 大きな体という共通点を持つ天方啓二(昭22卒)=浜松市、森町出身、天方産業相談役=も地域のリーダーとして活躍する一人。天方は「隣近所が知らない者同士では暮らしに潤いがない。もっと楽しい地域をつくろう」と浜松市神田地区の企業二十九社に呼び掛け、「神田大通り発展会」を設立した。道路整備や街灯の取り付け、防犯協力、情報交換も行っている。

 「世代を超えて楽しめる相撲の土俵が欲しい」。地域の要望に応じて社内に土俵を設け、天方相撲クラブをつくったのは昭和五十二年。小学生から大人まで週二回の練習を行い、大相撲力士も誕生した。柔道、空手など格闘技をはじめ、多くのスポーツを経験した天方自身もまわしを着けて参加する。「上司、部下という関係は土俵上には存在しない。いつもなぎ倒されて泥だらけ。練習後は、ちゃんこなべをつついたり、メンバーが良い関係を築いている」と語る。県相撲連盟会長も務める天方は、これまで七回の国民体育大会で県相撲チームを総監督として率いてきた。

 平成二年には、浜松市が提唱した音楽の街づくりに呼応し、吹奏楽の経験がある社員と天方吹奏楽団を結成。以来、福祉施設や教会など各地で手弁当の演奏会を続ける。社内食堂を改装して練習場を設け、楽器類は社で用意。「仕事と音楽、どちらが大切かという議論もあったが、吹奏楽団の活動で社員同士、チームワークの活性化につながり、演奏会で地域に貢献できるというプライド、やりがいが芽生え、仕事にも集中できる相乗効果が表れた」と天方。

 演奏技術は高く、昨年夏、米国で開かれた第九回世界吹奏楽協会国際大会に日本代表として出場した。今年創立十周年を迎え十一月四日には記念演奏会を行うほか、翌五日にも創立五十周年の浜松市動物園のための演奏会を、いずれも浜松市のアクトシティ浜松中ホールで予定している。

 天方は「社員や地域全体が生き生きする環境で仕事をするのが一番。余裕がある限り、さまざまな活動を支援していきたい」と話している。

 昨年から、インドネシア中央ジャワの港町・スマラムの国立ディポネゴロ大で、現地の大学や高校、語学学校の日本語教師を対象にした「日本語セミナー」が開かれるようになった。セミナーの立役者兼スポンサーの一人が、高校教諭の土屋菊男(昭31卒)=兵庫県西宮市=だ。

 土屋は平成四年から二年間、インドネシア・サチャワチャナ大へ留学。日本が大量に配布した日本語学習用の教科書に、現地の人たちが戸惑っている現状をつぶさに見てきた。「例えば山の字を『すべて“さん”と読め』という具合に、派遣された日本人の教え方もめちゃくちゃでした」

 何度もインドネシアを訪ねるうちに、教師たちの間で「地元に合った教え方を学ぶ日本語セミナーを開きたい」との声が出てきた。自身のポケットマネーで資金援助し、講師人選にもかかわった第一回セミナーには百人余が参加。全国ニュースで取り上げられるほど、画期的な取り組みになった。

 講義も担当した土屋は「日本人が海外で英語を話すとき、母国語並みの流ちょうな発音じゃなくても意味は通じている。外国語に隷属するのではなく、自分たちの言葉の中に取り込んでいけばいい」と強く訴えた。

 今年八月には百五十人を超える参加があり、セミナーは定着しそうだ。土屋は「個人の力は微々たるものですが、できる限り支援をしたい」と話し、来年の計画を着々と練っている。 

(文中敬称略)

 

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