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掛川西高100周年 天守の杜に

第3部 人物史編 インターネット

国境越え教育に活用 100ヵ国以上の子どもに人気

キッズスペースのサイト

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 インターネットの世界で、百カ国以上の子どもたちに愛されている教育サイトがある。その名も「キッズスペース」。接続すると、ぬいぐるみや本で彩られた子ども部屋が電脳空間に広がる。幾つものメニューの中から「豆の木」コーナーを選ぶと、日本の子どもがかいた絵に米国の子がお話を作り、カナダの子が書いた文章に北欧の子が絵をつける−そんな、国境を越えた共同作品が次々と現れる。

 教育とメディアの評価では国際的権威がある英国の「アワーズ・スキーム賞」に選ばれるなど、高い評価を得ているこのサイトは、平成七年三月、大庭さち子(昭50卒)=米国ニューヨーク在住=のアイデアから生まれた。

 浜松や東京でピアノを教えていた大庭は、子どもが自主的に学び、発見する喜びや仲間とのコミュニケーションづくりを重視する米国式の教育法を学ぶため、コロンビア大大学院へ進学。実践手段として、革新的な進歩を遂げていたインターネットの利用を思いつく。

 「一見したところ教育サイトには思えないが、参考資料へのリンクが簡単にできて、子どもたちが作品を発表し、それに対する反応もある。そんな多重構造のホームページを作りたかった」。三日三晩、取り付かれたように絵をかき、デザインや配置を考えキッズスペースを開いた。

 絵を載せるギャラリー。お話を披露するストーリーブック。友達をつくりたい子のためのペンパルボックスなど、メニューと内容はどんどん豊富になっていった。すぐに作品やメッセージへの反応が届く楽しさにひかれてか、いま毎月のリクエスト数は百四十カ国から約百五十万件。一大ネット社会に成長した。

 このサイトを支える要員はわずか十五人。作業量と責任範囲はますます増え、大庭も一日中コンピューターの前に座りっ放しの生活が続いている。商業広告を掲載しないため、開設当初には著作の印税などを運営資金に充てたこともある。現在はNTTの協賛を受け、今年夏には非営利団体として認可され、企業や個人から広く寄付を募っている。「友達からのメールを読みたいので、英語を習い始めました」「キッズスペースに作品が載り、返事をもらうことが私の目標です」。子どもたちから寄せられるメッセージに「役に立っている喜びがあります。大変でもやめられません」

 夢もある。「キッズスペースの利用者は、地図上の存在でしかなかった遠い外国にも、同じ悩みを持つ仲間がいると知っています。幼いころから外国への偏見を持たずに人と付き合ってきた子どもたちが十年後に社会へ出たとき、世界がどう変わるのか、今から楽しみなんです」

 大庭の活躍は同級生にも影響を与えた。自然環境教育に携わり、メダカを取り巻く現状を警告した「メダカが消える日」の著者、小澤祥司(昭50卒)=東京在住=だ。

 「私を育てたのは、家から徒歩一分で行ける田んぼや周りの水路だった。今の生活圏から離れた場所にある自然教育施設は、子どもにとって田んぼの代わりになるとは思えない」

 「身近なフィールドを遊びの場、学びの場として復活させるのはどうすればいいのか」と悩んでいた小澤は、キッズスペースにヒントを得て八年夏、自然学習サイト「エコロジカルウェッブ」を開設。子ども向けに、身近な動植物を探し出し、遊びに生かすヒントをふんだんな写真やイラストを使って提供している。

 「私たちは果たして、子どもが想像力と好奇心を刺激する場を提供できているのだろうか」。二人の活動の根元は同じだ。インターネットで空間と時間を超えて発信し続ける二人のメッセージは近い将来、着実に実を結ぶはずだ。

(文中敬称略)

 

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