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掛川西高100周年 天守の杜に

第3部 人物史編 小説家

OBの作品蔵書に多数 豊かな心の形成に

掛川西高の図書室に寄贈されたOB小説家の本の一部=掛川西高で

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 豊かな感性が、生活のあらゆる面で求められる時代。ペーパーテストの点数だけでは判断できない人間らしさの追求が教育現場でも課題とされる。旧制掛川中・掛川西高は、特色ある小説家を世に輩出し、それぞれが独自の視点、表現力で作品の中に人間性を投影してきた。母校在勤の国語科教諭らは「在校生をはじめ、若者たちが先輩諸氏の文学作品に触れて学び、豊かな心の形成に役立ててほしい」と語る。

 掛川西高の校舎四階にある図書室。三万六千冊以上の蔵書のうち、OBの小説家による作品も数多く目に入る。故榛葉英治(昭4卒)は昭和三十三年、長編小説「赤い雪」で直木賞を受賞。満州で終戦を迎え、満州国の崩壊を体験した榛葉が、脱走などの実体験を濃厚に交えたフィクションだ。国語科教諭の桑原美弥子(昭51卒)は「榛葉さんは、在学当時から読書好きで知られた。掛川中四年のときに開館した報徳図書館(大日本報徳社内)に通い詰め、手当たり次第に本を読みあさったと伝え聞いている」と話す。

 故小沢冬雄(本名小沢虎義、昭24卒)は、昭和四十九年に戦後の混乱期を描いた小説「鬼のいる杜で」が文藝賞を受賞。ほかにも戦争末期の掛川で少年らが体験した出来事を書いた私小説「黒い風を見た…」などが代表作。国語科教諭の戸塚恵(昭58卒)は「小沢さんは身近な話題を取り上げた私小説や歴史小説、翻訳業に熱心だった。『黒い風を見た…』は舞台が掛川で親しみやすい。在校生に読んでほしい一冊」と薦める。

 三戸岡道夫(本名大貫満雄、昭19卒)=東京都練馬区=は中でも異色の存在。協和銀行(現あさひ銀行)に入り、副頭取まで務めた銀行マンが、退職後の六十一歳で小説家デビューを果たした。

 「自分でなければ書けないものを書く」という信念を貫く三戸岡は、融資をめぐる銀行と企業の化かし合いを描いた「融資赤信号」、一枚の不渡り手形に銀行や企業が震え上がる「手形無惨」など企業小説で異彩を放つ。時代ものも数多く手掛け、昨年春には小説「冀北の人 岡田良一郎」を刊行。旧制掛川中の前史に当たる私塾・冀北学舎を創設したこの岡田を中心に、遠州地方の報徳運動の流れをまとめた。

 「報徳思想と聞くと難しく考えがちだが、根本は至誠、勤労、分度、推譲に要約された理想的生活スタイルのこと。平たく言えば、真心を込め、よく働き、堅実な生活を心掛け、他人の役に立ちましょうという教え。日本が発祥で今の世にも通用する立派な思想を、分かりやすく伝えたつもり」と穏やかに語る。

 コピーライターから小説家に転身したミキオ・E(本名江崎幹夫、昭46卒)=東京都練馬区=は今春、掛川を舞台とした児童文学作品「おけちゅう」で小川未明文学賞大賞に輝き、本格的な小説執筆活動を開始した。おけちゅうとは、昼間から酒のにおいをぷんぷんさせた“変なおじさん”のこと。掛川での小学校時代の体験を基に、少年期の怖いもの見たさを軽快なタッチで表現した。「掛川は愛すべき土地で、話題にも事欠かない。今後も掛川を舞台にした小説を書きたい」と意欲を見せる。

(文中敬称略)

 

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