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浜松学芸高100周年 学芸の詩

同窓生編 歌への岐路 真に客が喜ぶ芸を

昨年、オペラ「リゴレット」でタイトルロールを演じる牧野正人さん=東京の新国立劇場で

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 「あの時、恩師が職員室にいなかったら」。日本オペラ界屈指のバリトン歌手牧野正人=音楽科9回生、東京在住=は声楽一筋の半生を顧み、重要な岐路に触れた。

 浜松生まれの浜松育ち。中部中吹奏楽部でサクソホンに熱中。中三の夏休み明け、信愛音楽科にサクソホンで受験しようと相談に訪れた。が、「サクソホン専攻の募集はない」。職員室での説明にがく然。肩を落として帰ろうとした際、「君、歌でも歌ってみないか」の声。後に声楽恩師となる古屋豊だった。

 「レッスン室に連れていかれ、蚊(か)の鳴くような声で童謡『赤とんぼ』を歌ったんです」。すると「君、良い声を持ってるよ」と古屋。「何だか気を良くしちゃって」と牧野。運命の糸がつながった瞬間だった。

 思い出はつきない。レッスン用のカセットデッキを壊し、修理代の一部を学級費から借りた。が、まだ未返納で「級友に顔を合わせづらい」。校内の花壇でこっそりナスや枝豆を栽培してよく食べた。「僕が“主犯”との伝説。でも僕はナスだけ。枝豆を最初に植えたのは先輩です」と笑う。

 国立音大、同大学院声楽専攻修了。現在、同大、同大学院助教授。一九八四年、日仏声楽コンクール1位、九〇年、藤原歌劇団に「椿姫」の使者でデビュー。九三年には「マクベス」のタイトルロールを演じるなど同歌劇団で主要なバリトン歌手の地位を確立した。

 同年、オペラ「愛の媚薬」の公演直前、インフルエンザに襲われた。病床から劇場へ。「最悪の体調なのに演目内容は喜劇中の喜劇。にこにこ顔で行進入場するシーンは正直キツかった」。芸人のつらさを感じたという。

 浜松市民オペラ「カルメン」などにも出演。一昨年、浜松市の「ゆかり芸術家」として顕彰された。「大変な栄誉」と振り返り「お客さまは僕の財産。とりわけ浜松は温かい。だから郷里では一層緊張します」。

 「自ら専門のイタリアオペラを歌い続けることは伝統芸能を守る作業にも似ている。学んだことを真っ向勝負で表現し続けることこそお客さまのため」と信念を語る。

 音楽科二年(ピアノ専攻)の市川真一郎は「僕も将来、人を喜ばせるよう芸術性を高めたい。先輩のご活躍はそのモチベーションを高めてくれます」と声を弾ませた。

(文中敬称略)

 

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