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アサリ回復へダムの砂 干潟造成、稚貝育ちやすく

 近年のアサリ激減に歯止めをかける手法を、愛知県水産試験場(同県蒲郡市)が開発した。ダムの底に堆積した石や砂を海まで運んで干潟に敷き、アサリの稚貝が育ちやすい漁場を造成する。3年間の継続調査で天然の好漁場と同程度の個体の成育が確認できた。ダムの堆積砂除去と資源回復を両立できる技術として期待がかかる。

 調査では蒲郡市沿岸の三河湾の干潟に、約60キロ離れた同県豊田市の矢作ダムに堆積した石や砂を運び、三つの試験区を造成した。試験区はいずれも20メートル四方。石や砂の厚さを14センチ、28センチ、41センチに分けて敷き、2015年10月から3年間、アサリの生息数や成長度を調べた。

 干潟一帯は1ミリほどの粒の細かい砂質で、アサリが砂ごと流されてしまうため成育に不向きとされ、試験区外の地盤では18年7月の調査で1平方メートル当たり24個体しか確認できなかった。一方、試験区では石や砂が厚いほど個体数が多く、同時期の1平方メートル当たりの個体数は、厚さ14センチで32、28センチで776、41センチでは1万800にも上った。

 41センチの試験区では、市場に出荷できる25ミリ以上の個体も多数確認され、好漁場とされる天然の干潟と同程度の成育状況になっていることが分かった。同試験場漁場環境研究部の矢沢孝主任研究員は「ダムの堆積砂は1ミリに満たない砂から握りこぶしほどの石まで大小さまざま。アサリの幼生が波でさらわれにくく、定着して成長しやすい環境になったのではないか」と分析する。

 農林水産省の統計によると、アサリの漁獲量は08年には全国で3万9千トンだったが、17年は7千トンと5分の1以下に減少した。毎年全国一だった愛知県沖の漁獲量が08年の1万9千トンから17年の1600トンへと激減したのが大きな要因。寄生生物のカイヤドリウミグモという天敵の増加や海の栄養分の減少などが理由として考えられ、ダムの建設によりアサリの成育に必要な砂が河川によって海に運ばれなくなったのも一因とされる。

 こうした砂がダムの底にたまり続けると、ダムの貯水量を減らし、洪水調整機能の低下につながると指摘されている。国土交通省によると、今年7月時点で、国交省が管理する全国の558のダムのうち6割に当たる318のダムで堆積砂が増え、洪水調整機能に影響を及ぼす恐れがあるとされる。

 同研究部の蒲原聡部長は「アサリの回復と水害対策を同時に進めることができる有効な手法として、さらに活用方法を探っていきたい」と期待を込める。

 (中尾吟)

ダムに堆積した砂を41センチ敷いた試験区で採取されたアサリ。サイズの大きな個体が高密度で成育していた=愛知県蒲郡市沖の三河湾で

ダムに堆積した砂を41センチ敷いた試験区で採取されたアサリ。サイズの大きな個体が高密度で成育していた=愛知県蒲郡市沖の三河湾で

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