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中日新聞・中日スポーツ

藤永 不屈の逆転劇 10年ぶり世界舞台へ

 8月にベルリンで開催される世界選手権の代表選考会を兼ねて、8日に名古屋市の瑞穂陸上競技場を発着点に行われた2009名古屋国際女子マラソン(日本陸上競技連盟、中日新聞社主催)で、初マラソンの藤永佳子(資生堂)が2時間28分13秒で優勝した。
 世界選手権の代表枠は5。昨年11月の東京国際でマラソン初優勝した尾崎好美(第一生命)と今年1月の大阪国際を制した渋井陽子(三井住友海上)に続き、名古屋国際も日本選手最上位で優勝者となった藤永が自動的に代表に決まった。藤永は1999年セビリア大会で五千メートルに出場して以来、2度目の代表を手にした。

 レースは5キロ付近から藤永を含め、白雪(バイ・シュエ、中国)、キャロライン・キレル(ケニア)、新谷(にいや)仁美(豊田自動織機)の4人で上位争いを繰り広げた。29・7キロで新谷が先頭に立ったが、その後失速した新谷を藤永が36・9キロで一気に追い抜き、差を広げた。2位に2時間29分9秒で堀江知佳(アルゼ)、3位に町田祐子(日本ケミコン)が入った。新谷は8位、キレルは9位、白雪は13位、2000年シドニー五輪銀メダルのリディア・シモン(ルーマニア)は21位に終わった。

トップに立つ藤永佳子
36.9キロで、新谷仁美(右)を一気に抜き去りトップに立つ藤永佳子

先輩弘山のレース胸に 自分の走り貫く

 焦りたくなる気持ちを胸の奥底に封じ込めた。先頭から何度引き離されても藤永はじりじり食らいついた。
 5キロ付近から始まった4人による上位争いの駆け引き。初マラソンの身にとって「仕掛けるよりも体が動くままに流れに乗ろうと思った」と体の内にある声に従った。
 29・7キロで集団を引き離してトップに立った新谷が、そのまま押し切るかにみえた。35キロで28秒差をつけられたが、思い出したのは、所属先の先輩でもある弘山晴美のことだ。3年前の今大会で37歳だった弘山は、10度目のマラソンで悲願の初優勝を遂げた。
 その時のレースで弘山は、独走態勢を築いていた渋井を残り1キロで抜き去った。大会史に残る逆転劇が、藤永の折れそうな心を支えた。「先輩の走りを振り返り、35キロすぎからの直線で何が起こるか分からない」。新谷は早すぎたスパートに足の運びが鈍った。その背中が近づくたびに「焦ると労力を使うので、大丈夫、大丈夫と自分のリズムで走ろう」と。着実にペースを刻み、36・9キロでひっくり返した。先輩と同じく、逆転の名古屋を演出した。  高校3年生で世界選手権に出場した早熟のランナーは、大学2年生で尾てい骨を折った後、故障との戦いに明け暮れた。苦しんだ日々を思い返しながら「最高の笑顔で走ろう」と決めた。「楽しくもあり、苦しくもあり、1キロ、1キロの重みを感じながら走った」と踏みしめた。晴美の夫でもある弘山勉監督は「自分との戦いがかなりあった。精神的にも粘り強く、マラソンの適性は高い」とほめあげた。
 10年の時を経て、世界の舞台に返り咲く。「あのころは何も分からず出ただけ。今度は成長した自分の走りができるように」。胸を張って、ベルリンのスタートラインに立つ。

合宿の疲れ抜けず・大南敬

 25キロ付近で棄権した大南敬は「全体的に調子が良くなかった」と、うつむいた。スタート直後から先頭集団についていけず、ペースが上がらなかった。沿道で見ていたトヨタ車体の高橋監督がやめさせた。
 監督によると、直前に行った中国合宿の疲れが抜けず、帰国後も食欲がなかったという。監督は「完走で満足できるわけではない。棄権をばねにして次につなげてほしい」と前を向いた。

トップに立つ藤永佳子
先頭集団から離れるスタート直後の
大南敬

白雪、後悔の失速

 白雪は腕をあまり振らない独特のフォームで先頭を引っ張ったが、28キロすぎに失速した。「練習成果を発揮できなかった」と悔やんだ。
 2時間23分27秒の自己記録を持つ20歳は、中国の長距離を担う逸材として期待されている。「日本の一流選手と一緒に走れて、うれしい。これからもっと練習して頑張りたい」と、経験を糧にしていくつもりだ。

シモンは「満足」

 シドニー五輪銀メダルのリディア・シモンは21位に終わったものの「出場して良かった。タイムも満足している」と振り返った。
 五輪で金メダルを争った高橋さんとは、親しい間柄。1月の大阪国際を走ったばかりだが、高橋さんの「ありがとうラン」に合わせて出場した。並走はかなわなかったが、「レース前後に話ができて、彼女が幸せそうで私もうれしい」と笑みを浮かべた。
 子育てと競技を両立させる35歳は「いずれは結婚して赤ちゃんをつくって。それも一つのゴールだから」と高橋さんにエールを送った。

中日新聞 一面、運動面=2009年3月9日付

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