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新聞は未来照らす羅針盤 天野浩教授記念講演(2017年8月4日)

 私にとって新聞とは羅針盤です。未来を照らすための羅針盤がいかに大切か、青色発光ダイオード(LED)の研究開発を交えて話したい。

 青色LEDについて1989年11月17日の中日新聞に取り上げてもらいました。ここまでの話をかいつまんでします。経験から私が学んだのは特別な才能がなくても一生涯に1個打ち込めばできることがあるということ。大切なのは気持ちと熱中力です。

 大学に入った当時、未来が見えない状況でした。1年の時、工学序論の授業で教授が「工学は人と人を結ぶ学問だ」と教えてくれました。この瞬間、「勉強することは人の役に立つことなんだ」と心の底から理解できました。ここから未来が広がり、出合ったのが青色LEDだった。

 LEDは62年に赤色、70年代初頭に緑色が開発されました。次はガリウム窒素で青色と誰もが考え、多くの研究者が窒化ガリウムという結晶を作ろうとしたが失敗に終わりました。きれいな窒化ガリウム結晶はできない、(特に必要とされていた)p型の窒化ガリウムはできないなどの先入観ができていた。

 これを突破することが私の目標になりました。82年に(一緒に受賞した)赤崎勇先生の研究室に入り、窒化ガリウムを用いた青色LEDという研究にのめり込んだ。成功したら絶対世の中を変えられると思って続け、修士の時、世界で最もきれいな窒化ガリウム結晶を作ることができました。

 この時点では、新聞にはまったく注目されず、静かな状態で次の課題に取り組めた。それがp型です。こちらも研究を始めて4年目に世界で初めて作れた。発光したときは感激しました。論文を書き、中日新聞に取り上げられました。

 青色LEDは93年に商品化され、照明にも使えると分かって開発競争が起き、性能が上がりました。白熱電球より8倍効率が良く、置き換えれば省エネが進む。日本では2020年までに照明の約7割がLED照明になるとされ、年間2兆円の電力料金の削減になります。

 正直に話すと、(ノーベル物理学賞を受賞した)14年以前は新聞を購読していませんでした。今は愛読者。読んでよく分かるのは新聞記事は研究者にとって、研究の羅針盤ということ。例えば、アジア太平洋地域の気温上昇の予測の記事。対策を打たないと6度上昇するとされている。こういったことをベースに、われわれがどう解決しなければいけないかを考えるようになっています。

 最後に若い皆さんに言いたい。未来の世界は自分たちでつくるんだということをぜひ考えてほしい。新聞記事は現在の世界や日本を映し出す鏡です。よりよい世界をつくるための素材として使えば、明るい未来が待っていると思います。

 あまの・ひろし 1960年、浜松市生まれ。名古屋大工学部卒。88年に名大大学院博士後期課程を満期退学し、名大助手。名城大教授を経て、2010年から名大教授。14年に青色発光ダイオード(LED)開発でノーベル物理学賞を受賞した。

(8月4日付 中日新聞18面より)

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