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ふくい経済 シゴト咲く

越前箪笥の技守る 小柳箪笥

 小柳 範和(おやなぎ・のりかず)店主 42歳

「受け継がれた技術で、購入者が求める世界に一つしかないものを作る」と越前箪笥に情熱を注ぐ小柳範和さん=越前市の小柳箪笥で

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伝統と「革新」セット

 百年たっても使え、飾り金具はさびない。「昔から職人が手間暇を掛けて、実直にやっているのが越前箪笥(たんす)」。国の伝統的工芸品に指定されている越前箪笥の業界最年少伝統工芸士は、古いたんすを見るたびに、ものづくりのまちで育てられた職人たちが脈々と受け継いだ魅力を再認識する。

 良材を加工してくぎを使わずに組み立て漆を塗り、さらに手作りの飾り金具も付ける越前箪笥は市販のたんすよりはるかに高価だ。しかし、「受け継がれた技術で、購入者が求める世界に一つしかないものを作る。物を入れるだけの箱を作るわけにはいかない」と熱い思いを秘める。

 この考えが二月、確信になった。「あったらいいなを形にする」を理念にオーダー家具を手掛け、名古屋市の客から車だんすと和室に合う飾り金具付き越前箪笥調のテレビ台の注文を受けた。顧客と相談しながらデザインを決め、納品のとき「家の顔になる。家宝にする」と言われた。「購入者の名前や思いが代々受け継がれ、長年使われることで魂がこもる。たんすを作ることは人の気持ちに携わること」と誇りを持つ。

 全国各地の伝統工芸産地で、現代風にアレンジした商品が開発されている。しかし、「産地の技術や歴史の本質を分かった上で商品を開発しなければならない。奇をてらった物ばかり作っていると本質を見失い、伝統と技術も失う」と警鐘を鳴らす。本質と新商品を創造する「革新」はセットとの持論があり、伝統技術を守り続ける必要性を説く。

 自身、越前箪笥の産地でも指し物と塗り、飾り金具の製作などすべての技術を持つ数少ない職人の一人。分業制を薦められることはあるが「生産性は上がるかもしれない。品質に差が生じたり、一つの工程がなくなったら伝統工芸が廃れる。全部できる人間がいないと」と責任感は強い。鍵が閉まると「ビーン」と音がする越前箪笥の金具作りやたんすの構造にあるからくりなど研究も続けている。

 越前箪笥の知名度向上などにも熱心だ。二〇一六年には「木にこだわる」との思いを込めたブランド「kicoru(キコル)」を設立。指し物の技術を生かした木製のおもちゃや名刺入れなど雑貨を開発した。職業訓練木工科指導員免許の資格を生かし、木ではんこを作る子ども向けのワークショップ開催に取り組む。「ものづくりに興味を持ち、木の製品に慣れるきっかけにしてほしい」と願う。 (山内道朗)

 小柳 範和店主

 武生工業高卒業後、名古屋市の木工所での修業を経て越前市に戻り、2014年に4代目就任。越前箪笥のすべての工程ができる職人として15年2月に伝統工芸士に登録された。1974(昭和49)年2月21日生まれ。

 小柳箪笥(越前市)

 明治末期創業で約百年の老舗。初代兼次郎さんが指し物、二代目清さんがきりだんす、三代目宗辞さん(74)がオーダー家具を扱い、時代とともに歩んできた。範和さんもオーダー家具の注文を受けるほか、さらに指し物技術を生かした木製雑貨ブランド「kicoru」を立ち上げた。

 

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