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離れたのに近づく 避難計画 浮かぶ課題

県外に避難するため、地域ごとに分かれてバスに乗り込む住民たち=26日、おおい町本郷で(山田陽撮影)

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 関西電力大飯原発(おおい町)と高浜原発(高浜町)が同時に事故を起こすケースを想定して行われた国の原子力防災訓練だったが、二日目の広域避難訓練は実は、単独事故と変わらない想定で訓練が行われた。実際の避難ルートをたどると、複数の原発が事故を起こした際の避難に課題が浮かぶ。 (今井智文)

■経路は

 大飯原発のあるおおい町では午前八時すぎ、原発最寄りの大島地区や、町役場のある本郷地区などから住民二百八十人がバスや自家用車で避難を開始した。県外避難先に指定されている兵庫県川西市と伊丹市を目指し、県道や舞鶴若狭自動車道を使って西へ。出発から四十分ほどで高浜町の山間部にさしかかると、大飯原発からは約十六キロ離れた地点まで達したが、今度は高浜原発まで五・五キロまで近づいた。

 今回の訓練は、一日目は京都府北部の大地震で両原発が震度6弱の揺れに襲われ、大飯3号機と高浜4号機でともに原子炉に注水不能となったという想定で、安倍晋三首相が原子力緊急事態を宣言した。

 ただ、二日目は府県や地域ごとに条件を設定して避難を開始。福井県は、大飯のみ放射性物質が放出されたという条件で訓練をした。

 実際の事故で、両原発とも放射性物質の放出に至った場合にはどうするのか。訓練参加者からは「行政が判断してくれる避難経路を信じたい」(六十代男性)という声もある一方、町から西へ兵庫県川西市まで避難した二十代の漁師の男性は「自分の判断であっち(東側)に逃げるかも」と話す。

■状況で

 両原発の広域避難計画では、福井県内の原発から半径三十キロ圏内の住民は、東側の県内市町に避難するのを基本としている。風向きなどで難しい場合は兵庫県に向かうが、県危機対策・防災課の担当者も「避難者としても問題が生じている原発に近づくのは難しいだろう。二つの原発の事故があった場合には、状況を踏まえて避難先を決めるしかない」と述べるにとどまる。

 二〇一一年の福島第一原発事故も、南北に約十一キロ離れた福島第一と第二の両原発が共に危機を迎え、第二はかろうじて持ちこたえたという経緯がある。

 両原発の間の福島県富岡町から西の川西村に逃げた経験のある主婦青山総子さん(69)=滋賀県高島市=は「当時、原発に近づく方向に逃げるというのは考えもしなかった。混乱の中では、家族で一つ、決めたコースで逃げるのが精いっぱいではないか」と振り返り、しっかりとした想定の訓練を求める。

■温度差

 そもそも西川一誠知事は、これまで同時事故を想定した訓練について「想定として適当なのか」と懐疑的な姿勢を示してきた。県幹部は「新規制基準で多重防護がなされているという前提なので、まったく同時に複数の原発が事故にいたるという想定は受け入れがたい」と語る。西川知事は訓練前の会見で今回の訓練を「主にストレス(負荷)を強めるために訓練を平行的に行うのであって、一つの原因で同時に事故が発生した意味ではない」と位置付け、訓練後も「(同時事故の)想定が必要かというとそうでもない」と述べた。

 政府はこれまで原発ごとの避難計画で、同時事故でも対応できるとしてきた。訓練終了後に講評した内閣府の荒木真一・大臣官房審議官は「(原発ごとに単独に作ったものが)実際にうまくいくのか、訓練で検証し、教訓を踏まえて次を検討したい」と説明したが、今後の対応にどう生かされるかは未知数といえる。

 

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