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中日産業技術賞 経済産業大臣賞

田辺三菱製薬 2型糖尿病治療薬

2017年12月1日 朝刊から


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全く新しい糖尿病治療薬を開発した田辺三菱製薬の野村純宏主席研究員(左端)ら研究者たち=埼玉県戸田市の田辺三菱製薬戸田事業所で

過剰な糖 そのまま排出

 糖が尿に出る。その症状が由来の糖尿病は、20歳以上の5人に1人が患者かその予備軍といわれる国民病だ。これまでは尿に糖が出ないようインスリンの働きで血糖値をコントロールするのが一般的な治療だった。田辺三菱製薬(大阪市)はその発想を逆転させた。過剰な糖をあえて尿に出すことで治療する−。新しい2型糖尿病治療薬「カナグリフロジン」はこうして生まれた。

 食べ物の中の糖分は消化されブドウ糖に変わり、インスリンの働きで血液中から全身の細胞に取り込まれる。終着点の腎臓では血液がろ過され、老廃物と共に糖は原尿へ。ただ、糖は尿細管を通る際、血液に戻される。血糖値が高い糖尿病患者は、再吸収しきれない糖が尿で排出される。

 1990年。「尿でそのまま体外に排出できれば、血糖値も正常になっていく」。そう考えた辻原健二元研究員(74)を中心に開発がスタートした。当初は国内の医療関係者から「そんな薬が糖尿病に効くわけがない」と批判を受けた。それでも研究を続け、糖を再吸収する働きを阻み、尿でそのまま排出できる世界初の飲み薬「カナグリフロジン」の開発にこぎ着けた。

 審査基準が厳しい米国で足かけ4年の臨床試験を実施し、1日1錠を飲むことで血糖値の低減効果と安全性を確認。2013年、ライセンス契約を結ぶ米製薬大手で販売が始まると爆発的に広まった。日本でも14年に承認され、後を追う形で販売が始まった。現在では世界78カ国以上で承認されている。

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 現代医療では糖尿病の完治は難しいとされる。それでも開発に携わった主席研究員の野村純宏さん(61)は「インスリンに頼らないので、分泌する膵臓(すいぞう)に負担をかけることなく、長く安定的に血糖値の制御が期待できる」と話した。(酒井博章)

 2型糖尿病 インスリンの分泌量や働きの低下により発症する。過食や運動不足、ストレスなどの生活習慣と加齢の影響が原因とされ、中高年以降の肥満の人が発症しやすい。生活習慣病ともいわれ、日本人の糖尿病患者のおよそ90%を占める。インスリンの分泌部分が壊れ、まったくインスリンが分泌されなくなる1型糖尿病とは異なる。

 インスリンの働きと従来の治療法 膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)を下げる働きをする。インスリンの作用で臓器はブドウ糖を取り込んでエネルギーに変換したり、貯蔵したりする。糖尿病患者は飲み薬でインスリンの分泌を促したり、注射でインスリンを直接投与したりする。

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