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中日産業技術賞 経済産業大臣賞

東レ 炭素繊維複合材料

2016年11月29日 朝刊から


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高性能炭素繊維を持つ東レの(手前左から)近藤敏行取締役、須賀康雄常務ら開発陣=東京都中央区で

強度、変形しにくさ両立

 重さは鉄と比べて4分の1、強さは10倍以上。炭素繊維に樹脂を混ぜた炭素繊維複合材料(CFRP)は、航空機や燃料電池車(FCV)に幅広く使われている。東レ(東京)は糸のレベルから40年以上も開発してきた。今も進化し続けており、燃費や乗り心地の向上に貢献している。

 「当社のモットーは『超継続』。長期にわたる研究が今日の受注につながっている」。複合材料を担当する近藤敏行取締役(57)は胸を張る。

 商業生産を始めた1971年から10年以上は、釣りざおやゴルフシャフトなどが用途の主流。レジャー市場で開発費を稼ぎつつ、より大量に供給できる航空機に焦点を定めていた。

 二度の石油危機をへて、機体を軽量化するCFRPが注目を集めだし、80年代に航空機への採用が本格的に始まる。2011年から運航するボーイング787では機体の重量の半分をCFRPが占め、東レが独占供給している。燃費は従来の同型機と比べ2割改善した。

 さらに、14年に発表した開発成果が炭素繊維の性能を大きく向上させたことだ。強度と、変形しにくさ。2つの基本性能を同時に高めることは困難だったが、ナノレベルで繊維構造を緻密に制御することによって強化の両立に成功した。

 炭素繊維に樹脂を混ぜて成形する際、大きな圧力装置を用いない低コスト工法も三菱重工業と共同で確立した。国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の尾翼部品に採用され、東レが名古屋事業場(名古屋市)で量産する。

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 複合材料に詳しい名古屋大の石川隆司特任教授(67)は「炭素繊維と組み合わせる樹脂の研究も他社より進んでおり、品質管理レベルの高さが航空機や車のメーカーからの信用につながっている」と語る。

 トヨタ自動車とホンダが発売し、走行中に水しか出さないFCVにも、東レのCFRPは欠かせない。燃料の水素を蓄える高圧タンクはCFRPをぐるぐるに巻くことで強度を担保している。燃料電池の電極基材などにも使われている。

 炭素繊維の性能を極限まで追求する姿勢は揺るぎない。近藤取締役は「さらに工法を改良し、コスト低減も進めたい」と意気込む。(小柳悠志)

 炭素繊維複合材料 糸の直径は毛髪の10分の1程度の5〜15マイクロメートル。積み重ねた後、樹脂と混ぜて熱で固め、シート状などに加工して使う。軽い、強い、さびないという特長があり、航空機やロケットの機体のほか、パソコンケース、発電用風車の羽根、橋の補強材など用途は幅広い。炭素繊維市場の世界シェアは東レが3〜4割を握る首位で、帝人、三菱レイヨンを含む日本3社で6割以上を占める。東レの2016年3月期の事業売上高は1862億円で、うち航空宇宙分野が944億円。

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