トップ > 中日新聞社から > 表彰事業 > 中日文化賞 > 坂口志文氏

ここから本文

中日文化賞

大阪大学免疫学フロンティアセンター教授 坂口志文氏

2015年5月3日 朝刊から


大阪大学免疫学フロンティアセンター教授 坂口志文氏

大阪大学免疫学フロンティアセンター教授
坂口志文氏

制御性T細胞による免疫応答制御に関する研究 がん治療に新たな道

 穏やかな琵琶湖を毎日眺めながら、ほとりの滋賀県長浜市で育った。そのおかげか、おおらかで動じないようになったと自ら分析する性格が、免疫学の大きな発見につながった。

 免疫細胞は病原菌やウイルスなどの外敵を攻撃するが、誤って自分の体を攻撃すると逆に病気を起こしてしまう。そうならないように働きを抑えるブレーキ役の「制御性T細胞」という細胞が存在することを発見した。その成果から、がんの新たな治療法の扉が開かれようとしている。

 研究を始めた1970年代はブレーキ役の細胞など存在しないという学説が主流だった。従来の免疫学に飽き足らず、26歳で京都大大学院を中退。愛知県がんセンター(名古屋市)研究員になった。「自由に面白い研究ができる空気があった。1度訪問して気に入り、居ついてしまった」

 名古屋での4年間、免疫の鍵を握る胸腺がないマウスを研究し、当時の常識を外れた実験を基にブレーキ役の存在を確信した。10年以上も疑いの目を向けられたが95年、存在を決定づける論文を発表した。

 研究は世界に広がり、この細胞を増減して免疫を調整することでアレルギーやリウマチが根本的に治せる可能性が出てきた。がん組織の中にこの細胞がいるせいで、免疫ががんを攻撃できなくなっていると解明された。細胞を減らすことで、強力にがんを攻撃できるようになりつつある。

 逆風の時期も「若いころ確かな実験をしたという自信があって、自説を信じ続けられた」と振り返る。受賞には「評価し、期待してもらえるのは本当に光栄。このがん治療を10年以内に誰もが受けられるようにしなければ」と決意している。64歳。京都市北区在住。 (京都支局・森耕一)

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索