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岐阜ニュース

<論点の現場から>(5) 格差社会 

新たな職探しのため求人票を見る男性=岐阜市内で

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 昼休みの事務所で一人、自宅から持ってきた食パンをかじる。レタスを一枚だけのせ、味付けは塩とこしょう。岐阜市の男性(48)が毎日の昼食代を百円以内に切り詰め、間もなく四年になる。

 二〇〇九年の正月。十年間近く勤めた工作機械の工場が大手に吸収された。地元の工業高校卒。設計技術者としての腕を買われて役員にまでなった職場を、突然失った。

 一千万円を超えるローンで一戸建てを新築してから、まだ二年だった。うつを抱えた妻と、アトピーを患う育ち盛りの息子二人を養わねば。気持ちは焦るが、正社員の職は見つからない。

 一年後、金融関係の職場にもぐり込んだ。いわゆる非正規雇用の契約社員。しばしば顧客の罵声を浴びる窓口仕事。月の手取りは元の四分の一、十万円余まで下がった。

 生命保険とテレビ、新聞は諦めた。携帯電話さえも手放した。それでも、息子のためにアトピー対策を施した自宅は譲れない。病院代も削れない。差し引くと、月五万円で光熱費と食費を賄う必要がある。

 「命懸けで節約すれば、ただ生きていくことだけはできる」

 実は、夕食も朝食も百円以内だ。一斤七十八円の食パンを五枚切りに。一玉十八円のうどんや一個二十円のコロッケをスーパーで手に入れる。息子たちには時々、カレーライスやハンバーグを作るけれど、自分は食べない。

 あと三カ月で、現在の勤め先との契約も切れてしまう。「他人の富を食いつぶす側になれなかった。自分の力不足」。社会のせいにはしたくない、と考えている。

(中野祐紀)

◆東海4県の非正規社員、35%に上昇

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 正社員並みに長時間働きながら、最低限の生活に必要な収入を得られないワーキングプア(働く貧困層)。おおむね年収二百万円以下とされ、生活保護の予備軍でもある。

 「契約社員や派遣社員などの非正規雇用と切り離せない問題」とみるのは、岐阜経済大の木村隆之教授(労働経済論)。「医師などよほどの専門職でない限り、非正規での二百万円越えは無理」

 総務省の「労働力調査」によると、岐阜、愛知、三重、静岡の東海四県の労働者のうち、非正規の占める割合は35%。この十年間で6ポイント上がった。

 背景には、「企業の国際競争力強化」を掛け声に自民党の小泉内閣(〇一〜〇六年)などが進めた雇用の規制緩和がある。政権を継いだ民主党も解決策を示せなかった。

 この数値と呼応するように、県内の生活保護受給世帯も十年間で倍増。昨年度は八千七百世帯を超えた。このままだと社会保障費が膨らみ、納税者の負担はさらに重くなる。

 =おわり