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岐阜ニュース

<論点の現場から>(3) 対中外交

金属塊を電動ドリルで削る女性従業員=中濃地方の工場で

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 エプロンにマスクと腕カバー、軍手姿の女性が、漬物石大の金属塊を電動ドリルで削っていた。作業を終え、足元に散ったおがくずみたいな金属くずをほうきで払い、緑色の床をまたつるつるで清潔な状態に戻した。

 中濃地方で工作機械の部品をつくる下請け工場。また、仕事が減る。かつて週六日だった稼働日は、来月から週三日に半減してしまう。

 経営者(60)がぼやいた。「この二、三カ月でひどくなりました」

 日本と中国の関係が悪化したせいだ。もともと欧州不況と円高で受注が低迷。そこに追い打ちを掛けたのが、中国が九月に尖閣諸島問題で日本製品の通関を厳格化したことだった。受注の落ち込みは、前年比七割減に達した。

 「二〇〇八年のリーマン・ショックの時よりひどいでね」と経営者は声を荒らげる。

 休業した日の従業員の給料は、国の補助金を充てている。ところが、十月から審査が厳しくなった。来年十月からは支給日数が半減とも聞いている。

 「従業員の削減は考えてない」と経営者。辞めさせたら、再就職先がなかなか見つからないのが目に見えているからだ。でも、受注が無ければ、会社の持ち出しが増えるだけ。

 日本政府が尖閣諸島を国有化したのと、中国側の激しすぎる反発の両方が「取り返しのつかない大失敗」と考える。

 「日本の産業は海外で売れてなんぼの世界」。価格が一桁違う中国製品の質が日本製品に迫っていることも脅威だ。「努力の限界。政治が何とかしないと、ものづくりの現場は滅びてしまう」

(松崎晃子)

◆“政冷経冷”で輸出急降下

 中国は二〇〇九年から、日本の最大の取引先となっている。一昨年の輸出額は十年前の四倍の十三兆円余に達した。うち1%弱の九百三十七億円が県内の製造業。特に輸送機器は五年前の三倍の百十九億円に増加した。

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 県内企業が中国に現地法人をつくる動きも強まっている。ジェトロ岐阜(岐阜市)の調査では、少なくとも百九十四事業所あり、この十年間で倍増した。

 一方、政治は冷え切っていても、経済では手を取り合う「政冷経熱」と表現されてきた日中関係は最近、「政冷経冷」の状態。東京都による尖閣諸島の購入計画をきっかけに日中関係が悪化し、中国で日本製品の不買運動が広がった。県内分を含む名古屋税関を通じた中国向けの輸出は三月に二千五十九億円だったが、十月は千六百三十七億円まで落ち込んだ。

(多園尚樹)