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進まぬ復興 むなしい選挙 陸前高田ルポ

 東日本大震災後、初の衆院選。遅々として復興が進まない中、東北地方の被災者たちは無力感を感じながら選挙戦を見詰める。津波で壊滅的な被害を受け、今も五千三百人以上が仮設住宅で暮らす岩手県陸前高田市を歩いた。

 「選挙のニュースなんて見ないよ。ばかばかしい」

 十三日朝、陸前高田市の第一中学校校庭に立つ仮設住宅の前。自治会副会長の小友勝見さん(69)は、衆院選候補者の選挙ポスター掲示板に目もくれず、投票日の翌日にある民謡まつりのポスターを隣に張った。「みんな、こっちの方が関心があるよ」

 百五十世帯分の仮設住宅は、完成した昨年夏から満杯状態。市営住宅の造成工事が始まったが、入居の見通しは三年後。「狭いし、壁は薄いし、気持ちが変になる」

 陸前高田市を含む岩手3区では復興担当副大臣の民主党前職と自民党、日本未来の党、共産党のそれぞれ新人が戦う。民主前職は津波で市内の実家と事務所が流され、両親、妻、長男、秘書を亡くした被災者でもある。

 ただ、選挙戦最終盤を迎えた市内で、選挙カーをほとんど目にしない。仮設住宅には選挙ポスター掲示板はあるが、人通りのなくなったかつての市中心部にはない。仮設住宅の六十代男性は「岩手は広いから、もともと選挙カーはそんなに来ないけど、本当に選挙という感じがしない」。

 高台にある校庭に、かつての市中心部を一望できる場所がある。ほとんど更地。津波で破壊された三階建て以上の鉄骨建造物がぽつり、ぽつり。がれきを取り除く重機の音だけ、かすかに聞こえる。

 「あの辺に私の家があったんですよ。いつもいやされた高田の松原も変わり果てました」。夫、次男の三人で仮設に暮らす村上和美さん(69)は、その先にある海を見詰めた。

 選挙では地元出身の復興副大臣に入れようとは思っている。ただ、復興予算が流用されるなど、政治への不信感は強く「選挙があっても変わらないんでしょうね」と力なくつぶやく。

 「年金生活者にとって消費税が上がれば、食べるのも苦しくなる。津波で亡くなった方が楽だったかもしれない」とは、夫を津波で亡くし、四畳半一間の仮設住宅に住む藤倉ミサ子さん(77)。「生かされた人間にとっては一刻も早い復興。望むのはそれだけ。このまま仮設で終わりたくないからね」と、村上さんと目を見合わせた。

(広瀬和実、写真も)

 <陸前高田市の被災状況> 市によると、東日本大震災の津波で3368世帯が被災し、うち9割以上が全壊した。当時の市の人口2万4246人のうち、1735人が死亡。最大1万143人が避難所生活を送った。若者の流出も増え、11月末現在で人口は2万737人まで減った。