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埼玉集団避難の双葉町「私たちも福島県民」

期日前投票所で投票する福島県双葉町から避難してきた男性=埼玉県加須市で

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 十六日の投票日が迫る衆院選から「取り残された」と嘆く人たちがいる。東京電力福島第一原発事故で、埼玉県加須市の旧騎西高校に役場機能ごと避難している福島県双葉町民だ。投票先の福島5区候補者の演説を聞く機会はほとんどなく、候補者のポスター掲示板もない。避難者の「一票」が忘れられようとしている。

 「新顔の候補者がよく分からない。一年九カ月も避難生活が続き置き去りにされたよう。私たちは軽く見られているのでは」と困惑した表情の高野一美さん(81)。今も約百六十人の町民が暮らす。

 敷地内には候補者のポスター掲示板がない。公選法施行令に基づき双葉町が設置できる掲示板は九カ所に限られ、町は町民がいる福島県内の仮設住宅九カ所を優先した。候補者六人の政見放送は加須市では視聴できない。

 自治会長を務める堀川光男さん(56)は「私たちも福島県民なんだって言いたくなる」と嘆く。双葉町の有権者約五千四百人のうち、四割の約二千三百人は福島県外で暮らす。高野さんは「判断は難しくても、票にしないと私たちの望みは届かない」と力を込めた。

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 福島5区の区割りは双葉郡(双葉町など八町村)といわき市。福島県などによると、有権者約三十三万人のうち全町・全村避難対象の双葉、富岡、浪江、大熊、楢葉町民と葛尾村民は約五万人で、このうち三割弱が県外に避難している。

 全国に散らばる有権者にどう支持を浸透させるか。候補者たちは手探りの選挙運動を続けるが、大票田のいわき市を中心に動かざるを得ない。「県外遊説」については「行きたいが、時間が足りない」「検討したが、短い選挙期間では難しい」との声が漏れる。

 それでも二人の新人候補者が六日と十日、それぞれ旧騎西高を訪れた。十日に来た新人の男性は、校舎から出てきた町民に駆け寄って「元気を出してください」と握手を繰り返し、「私も原発被災者。一緒に声を上げたい」と支持を訴えた。

 福島県内の仮設住宅を丹念に回る候補者もいるが、厳しい目も向けられる。

 福島県郡山市の仮設住宅で暮らす双葉町民の高野公二さん(37)は「選挙前に仮設を何回訪れ、何をしたのか」と突き放す。高野さんは浪江町の会社に勤めていたが、原発事故後は茨城県や東京都内に転勤。慣れない仕事や人間関係で体調を崩し、退社した。今は母たま子さん(68)や兄(39)と同居する。

 たま子さんは避難生活が長引く中、脚が弱り、体調を崩しがちという。「いつまで耐えればいいんでしょう。選挙後には将来への道筋だけでも、きちんと決めてほしい」と訴えた。

(石井宏昌)