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<解きたい選挙>(下) 社会運動家・湯浅誠さん

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 ずっと東京で活動してきましたが、今年は期間限定で大阪に拠点を移しました。昨年十一月の大阪市長選で橋下徹さんが大勝したのを機に、大阪で民主主義に向き合う必要があると思ったんです。

 橋下さんは市職員と国を壊すと主張し、支持を得た。大阪で分かったのは、東京で感じるよりも人々の不信感も不安感も強い。「既得権益をたたくためには多少乱暴でもあれくらいするしかない」という心理が、橋下さんのような強い言葉を放つ「ヒーロー」に解決を委ねようと支持を広げたのだと思います。

 これは大阪だけの問題ではなく、貧困や格差の拡大と連動しています。生活と仕事に追われると、物事を多面的に考える余裕がなくなるので、「うまくやっておいて」と誰かに問題解決を任せたくなるものです。このままでは民主主義があっさり壊れるのでは、という危機感があります。二〇〇八年のリーマン・ショック後、貧困問題が注目されましたが改善されていない。一度貧困に陥れば余裕を失い社会から孤立する。追い詰められる人が増える中で、今や最低限の支えである生活保護までもが既得権益とされてしまいました。

 公示直前の二日まで十日間連続で、大阪市内で「大阪ええじゃないか」というイベントをやりました。子育て、働き方などの問題解決のために活動する団体と人とをつなぐ試みです。約六十のイベントが開催され「おっさんくさい政治に飽きた」という女性大学教員の冗談の一言で生まれた「全日本おばちゃん党」という運動も誕生した。主婦や会社員などさまざまな人が参加し、勉強会や対話を通して、女性の底上げを図ろうとしています。

 子育ての問題で「政策を充実させない行政が悪い」と言うだけでは、現に困っている人は放置されます。本当に充実させようと思えば、言うだけではなく責任を引き受け、当事者にならないと。自分たちで改善策を実行しながら、行政や政治家に要求していかないと、迫力がない。私たちが変えていくためには、面倒な作業を地道に積み重ねていくしかないんです。

 ただ選挙は始まっていて、十分な時間がない。忘れてはならないのは誰かに任せきりにすれば、必ず幻滅に変わるということです。離合集散した政党の主張は選挙向けと割り切り、二、三年後どこに向かうかを想像する。候補者や政党の描く社会構想が私たちの参加を促すのか、それとも妨げるのかに関心を向ける。民主主義を支えるための一票を慎重に投じたいと思います。

 <ゆあさ・まこと> 1969年、東京都生まれ。社会運動家。95年からホームレス支援活動に関わる。東京大大学院在学中の2001年、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」設立。反貧困ネットワーク事務局長。08年末に東京・日比谷公園の「年越し派遣村」村長、09〜12年、民主党政権で内閣府参与を務めた。著書に「反貧困」「ヒーローを待っていても世界は変わらない」など。

(加藤文、小嶋麻友美、小川慎一が担当しました)