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「原発稼働ゼロ」時期に幅

◆当面維持なら「核のごみ」課題

 私たちの暮らしをいかに良くするか。その政策を決めるのは政治の大きな役割だ。公約は土台部分となるだけに、しっかりとしたチェックは欠かせない。「有権者発」に寄せられた読者のさまざまな提言、疑問をもとに、各党に「もっと知りたい」点を聞いた。

 国策として進められてきた原発をめぐる環境は福島第一原発事故で激変した。

 国内の総発電量に占める比率は二〇一〇年度は25%だったのに対し、事故後、一一年度は9%まで低下した。冷暖房利用が増える真夏と真冬の電力不足が心配されたが、火力発電の増強や節電で乗り切り、今年五月には、四十二年ぶりの「稼働ゼロ」になった。

 一方、政府は経済界などの要請を受け、大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を決定。大飯以外の再稼働の判断は、原子力規制委員会が新たな安全基準を策定するまで、事実上棚上げされている。

 「忠実に公約を守り抜いて、日本を安心できる国に導いてほしい」と訴えるのは、栃木県大田原市の著述業黒羽洋さん(69)だ。

 脱原発か、原発維持か。各党はどう考えているのか。

 公約で目標時期を示して「原発ゼロ」を掲げるのは、民主、未来、公明、共産、みんな、社民の各党。書きぶりには「即時」から「三〇年代」まで幅がある。大地と日本は時期を明記していない。

 民主党は安全が確認された原発は再稼働させながら、三〇年代にゼロを目指す方針。野田佳彦首相は「民主党の脱原発が一番現実的だ」と強調する。だが、使用済み核燃料を再利用する再処理計画の継続や、建設中の原発の工事再開を決めるなど、脱原発との矛盾も目立つ。

 「安全神話が崩れた3・11。原発が争点になるのは自然の流れだ。私たちの生活スタイルを変える勇気が試されようとしている」(愛知県西尾市、無職稲垣春雄さん、81歳)

 いつゼロにするにしても、その道筋や代替エネルギーの確保、電気料金の問題など、暮らしに直結する課題は残る。脱原発を打ち出す党はどう考えているのか。質問をぶつけてみた。

 重点の置き方は違うが、当面は火力発電の効率化でしのぎ、その間に再生可能エネルギーの普及や節電を進めるといった点は共通している。未来は三年間は、電力会社のコスト増分を交付国債発行で賄うことを提案。市場原理を重んじるみんなは電力自由化が進めば、コストの高い原発は淘汰(とうた)されると主張する。

 ただ、再生エネルギーの普及には、財源問題や電力会社の抵抗などクリアしなければいけない課題も少なくない。

 公約で「ゼロ」には触れていない党はどう考えるのか。

 維新は「原子力政策の見直しで三〇年代には自然に淘汰される」と回答したが、石原慎太郎代表は現時点で原発ゼロを目指す考えがないと表明、党内の見解がまとまっていない。

 一方、十年以内に最適な電力供給割合を決めるとする自民党は当面維持の方針だ。安倍晋三総裁は「責任を持って国民生活に直結するエネルギーの安定的な確保は守る」と強調している。これには「どこにも捨てられない核のごみの堆積が続けば、人のいるところはなくなる」=東京都杉並区、男性医師(78)=との指摘がある。

 本紙の調べでは、全国の原発のうち三十三基は、数年間稼働させれば使用済み核燃料プールが満杯になり動かせなくなる。新たな中間貯蔵施設の建設には時間がかかり、青森県六ケ所村の再処理工場の貯蔵プールもほぼ埋まっている。原発を続けるなら、避けて通れない課題だ。

 安倍氏は「使用済み核燃料の最終処分は世界の課題。日本で技術者を育成する必要がある」と問題意識は示すが、党内論議の結論は出ていない。 (宮尾幹成)

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