文字サイズ

全国ニュース

<私たちの手で 海外の試み>(下) 原発問題争点化 ネットに活路

ソウル市内で、脱原発候補への投票を呼び掛ける緑色のサンタクロース姿の市民団体メンバーら

写真

 韓国・青瓦台(大統領府)を遠望するソウル中心部の大通り。緑色のサンタクロースの衣装を着た若者らが行き交う人々に「大統領選で緑の公約を掲げる候補に投票するキャンペーンです」と署名を呼び掛けた。緑の公約とは、脱原発など環境重視の政策だ。

 「緑サンタ」は、昨年の東京電力福島第一原発事故の直後に発足した「核(原発)のない社会のための共同行動」のメンバー。参加団体は当初の約二十から七十六に増えた。

 現在、韓国政府の方針は「拡原発」。福島の事故後も商業運転開始や新規着工が続き、稼働中の二十三基と建設中の五基のほか、八基の建設計画が具体化している。李明博(イミョンバク)大統領自ら原発輸出推進を前面に掲げる。

 来年二月からの新大統領を決める今月十九日の大統領選は、与党セヌリ党の朴槿恵(パククンヘ)氏(60)と最大野党・民主統合党の文在寅(ムンジェイン)氏(59)との事実上の一騎打ちで、保守、進歩両陣営の対決の構図。だが、論戦は政治改革や経済対策、福祉・社会保障が中心で、原発は争点になっていない。

 一方で、市民は原発への不安を募らせる。世論調査で「原発は安全ではない」とする回答は、福島の事故前の約40%から事故後は約60%に増えた。そうした人々の声が選挙戦に反映されない現状に不満を抱き、「ならば私たちの手で争点化を」というのが緑サンタの考えだ。

 激戦となった今回の大統領選は得票差1〜2%の争いともいわれる。韓国の有権者は約四千万人。投票率を70%とすると1〜2%は二十八万〜五十六万票。もし「脱原発候補に投票する」との署名が数十万に達すれば、有力二候補とも原発問題に真正面から向き合わざるを得なくなる。

 頼みの綱は、インターネットや、フェイスブック、ツイッターなどの交流サイト(SNS)での情報拡散。日本ではネットによる選挙運動が認められておらず、公示後は候補者名を載せたホームページなどの更新も禁止されているが、韓国憲法裁判所は昨年末に選挙運動にネット利用を認める判断を下した。

 韓国のスマートフォン利用者は約三千万人に上る。選挙期間中も日々の思いをつぶやくツイッターのフォロワーは朴氏が約二十四万人、文氏が約三十万人に達するという。

 運動が始まったばかりの「脱原発候補に投票」を支持するネット署名は六日時点で千二百件超。この三日間で約三倍に増えた。中心を担う「韓国環境運動連合」の安哉訓(アンジェフン)幹事は「ネットで訴え続ければ、必ず支持は拡大する」と意気込みを語った。

 (ソウル・篠ケ瀬祐司、写真も)