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<私たちの手で 海外の試み>(上) 若者デモで目覚めた

「まともに歩けないほど、怒れる人々が集まった」。スペイン北東部バルセロナのカタルーニャ広場で、昨年5月に始まった若者らのデモ「15M」の熱気を語るイバイ・アルビデさん

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 政治の主体的参加者は、今回の総選挙で一票を投じる私たち一人一人。世界各国でも、経済危機などを受け従来の政治への不満が高まり、自ら行動を起こす若者らの運動が広がる。そうした海外の取り組みを、現場で見聞きした。

 「日本も、原発事故など大変な問題を抱えている。不満を膨らますだけでなく、抗議のため立ち上がることです。必ず何かが変わると思う」

 先月二十五日のスペイン北東部カタルーニャ自治州議会選挙で初当選したダビド・フェルナンデスさん(37)は、日本の有権者に思いをはせる。職業はジャーナリスト。政治活動には無縁だった。しかし、昨年五月、債務危機に苦しむスペインで自然発生的に広まった「インディグナドス(怒れる者たち)」と呼ばれる若者主体のデモに飛び込んだ。

 デモの始まりは首都マドリードのプエルタデルソル広場で開かれた小集会。東京の首相官邸前デモと同様に、ささやかな呼び掛けがネットを通じて全土に広まり、都市では数万人が広場を占拠した。初日の五月十五日にちなみ運動は「15M」と名付けられ、危機に揺れる欧州各地へ拡大。米ニューヨークのウォール街占拠運動にも影響した。スペインでは今も熱気が失われず、デモが続く。

 「政治の主役は政治家ではない。自分たちだと、この場所で気付いたんだ」。カタルーニャ州の州都バルセロナ中心部の広場で、弁護士のイバイ・アルビデさん(33)は一年半前を感慨深げに振り返った。既存の政党や労組に頼らず、就職先の見つからない学生や失業中の若者らが非暴力のデモで、左右二大政党が権力を握ってきた政治に怒りの「NO」を突き付けてきた。

 当初の座り込みはひと月続き、出会った人々は夜を徹し社会や政治を論じた。「不況や失業は避けられない天災だと思っていたが、次第に銀行や政治家の責任が見えてきた」とアルビデさん。宝石商のダリオ・デプラドさん(40)も「抗議が得意ではなかったわれわれの意識を、15Mが変えた」と言う。

 「大政党は公約を守らず金融界の言いなりになっている」との不満を抑えきれずに、フェルナンデスさんはわずか一カ月前、出馬を表明した。15Mの主張を代弁する格好で「反緊縮」「政治家の特権をなくせ」と唱え初めて州議会選を戦った小政党「民衆連合」の比例候補に加わった。

 民衆連合は今回三議席を獲得。国会ではないものの、欧州屈指の工業地帯を抱えスペインからの分離独立を訴える政党が三分の二に近いカタルーニャ州議会の一角を占め「トロイの木馬のように議会内部から変革する」とフェルナンデスさんは誓った。

 (バルセロナで、野村悦芳、写真も)