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玉虫色の公約、分からん 主要各党

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 景気動向をあいまいな表現で伝える日本銀行の「景気文学」や、国会の「官僚答弁」に勝るとも劣らない。衆院選に向け、民主党や自民党など主要政党が発表した選挙公約。特に、原発や環太平洋連携協定(TPP)などの主要争点で、あえて賛否を曖昧にした表現が目立つ。政策に通じた専門家ですら戸惑う文章表現は「公約文学」という新ジャンルを切り開いた感すらある。

 脱原発デモを呼び掛ける愛知県瀬戸市の会社員林晃佑さん(27)は、自民の「十年以内に電源構成のベストミックスを確立する」との文言に首をかしげる。

 「素直に『原発維持』と書けばいいのに」。日本維新の会が政策実例集に盛り込んだ「二〇三〇年代までにフェードアウト(消失)することになる」との表現にも「批判を浴び、無理やり公約に脱原発を盛り込んだ印象」と指摘する。

 福島大の清水修二教授(財政学)は「自民は原発の是非に何も言っていないのと同じ。民主も、どう原発ゼロを達成するのか具体性に欠け、脱原発はポーズにしか見えない」と批判する。

 昨年末、TPP交渉参加への抗議行動に加わった愛知県一宮市の農業尾関幸二さん(40)は頭を悩ませる。

 「こんな公約では投票先を選べない。もっとズバッと書いてくれないと」

 TPPへの立場で投票先を決めるつもりで、公約に「反対」と明記した自民に期待したいが「聖域なき関税撤廃を前提にする限り」との条件に不安を抱く。「結局、賛成に転じるんじゃないかと心配だ」

 東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)も自民の条件を問題視。「TPPに反対だからと自民に票を入れるのは、少し慎重に考えた方がいい」と指摘する。

 鈴木教授は、TPPに積極的とされる民主、維新の公約でも「ごまかしが目立つ」という。「国益の確保が大前提」(民主)や「国益に反する場合は反対」(維新)との記述に「実際に交渉に入れば途中で抜けるのは難しく、意味がない表現だ」とみる。

 政治と言葉の関係を研究する名古屋外国語大の高瀬淳一教授(情報政治学)は「民主、自民、維新とも選挙後に政権与党になることを想定し、曖昧で逃げ道の多い文章が目立つ」と指摘する。特に問題視するのが「促す」「目指す」「万全を期す」など事実上、公約達成を検証できない「お役所言葉」の多さだ。

 日本未来の党に対しても「原発施策は細かく書いているが、それ以外は前回衆院選で民主が掲げて達成できなかった聞こえのいい公約ばかり。財源も明記されておらず、無責任だ」と指摘する。

 「公約は有権者への約束というより、政党の自己宣伝文と思った方がいい。有権者は初めから疑ってかかるべきだ」と述べた。