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脱原発 勇気と覚悟問う 東京本社論説主幹・山田哲夫

 東日本大震災後初の国政選挙です。国の将来を決める重要テーマが争点、熟慮の選択をしたいものです。

 大震災と福島原発事故は、政治への傍観や行政や専門家への「お任せ」が生存をも脅かす重大過失につながってしまうことを骨身にしみさせました。私たち一人ひとりが民主主義の主体的参加者、国や社会のあり方は考えても考え過ぎることはない、と教えました。

 総選挙でまず問いたいのは原発、エネルギー政策。福島事故が一年九カ月後の今も収束から遠く、十六万人に避難生活を強いている現状や事故は二度と起こしてはならず、高レベル放射性廃棄物の十万年の汚染の制御不能性から、脱原発は論理的必然、倫理的な要請でもあります。

 それは私たちに内なる成長信仰やエネルギー多消費型生活の変更を迫るものです。受け入れの勇気や覚悟があるかどうか、脱原発を掲げる各党、各候補の本気度を見定めつつ、同時に自らに問わなければなりません。

 憲法も重大テーマに浮上しました。尖閣諸島や竹島の領土問題もあって、九条改正論や集団的自衛権行使容認論が声高です。

 しかし、九条改正や政府解釈変更は戦後日本の国のかたちを根底から変えかねません。その平和主義で世界に築いた信用を一気に崩しかねないのです。

 自衛隊は現憲法で容認され、実績を積み上げてきました。戦争放棄や武力の威嚇や行使を禁じた九条は、人間の傲慢(ごうまん)と愚かさを最後のところで救う合理的な条項。憲法原理を簡単に変えられない理由もそこにあります。

 日米同盟は日本の安全保障の柱ですが、同盟の深化や強化は追随とは違うはずです。それほど重要な日米同盟なら沖縄の一方的な基地負担から、本土も応分の負担をと考えるのですがどうでしょう。

 少子高齢化とグローバル経済のコスト競争のなかで社会保障の機能強化も喫緊の課題。若者らの雇用や子育て支援を進め、医師や看護師の過労、介護ヘルパーの低賃金も解消されなければなりません。不安な時代だからこそ支え合い社会の構築が急務です。

 原発も憲法も各党が一枚岩というわけではないようです。対立する意見、分裂と離合集散の要素が内包されています。長期的な政界再編も視野に、党より議員個人の選択もありそうです。主張に注意深く耳を傾けたいと思います。