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アベノミクス恩恵遠い庶民 津の7人大家族の家計簿見せて

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 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」をめぐり、与野党が激しい論戦を展開する衆院選。金融緩和と円安誘導で大手を中心に企業業績は急回復を見せるが、その恩恵は果たして庶民にまで及んでいるのか。三重県内に住む大家族の暮らしからアベノミクスを検証した。

 午後三時すぎ。おやつのミカンとリンゴ、クッキーはあっという間に居間のちゃぶ台から消えた。

 県庁所在地、津市で林業に従事する片山義和さん(44)は妻と子ども五人の七人家族。一番上の子は中学二年の長男(14)、下は四歳の長女でいずれも食べ盛り。

 「みんな食欲がすごい」と目を細める義和さんの横で、家計のやりくりを任される妻の幸代さん(41)はちょっぴり心配顔。「おやつならまだいいけれど、牛乳や卵、ガソリンなど日常品が日に日に高くなっている感じ。去年と比べて、月一万円くらいは支出が増えていると思う」と漏らす。

 安倍政権が誕生した二年前に一ドル=約八五円だった為替レートは今や約一二〇円。円安は輸出企業のもうけを増やし、トヨタ自動車の場合、一円の円安で年間四百億円の利益につながるという。ところが、片山家はその逆。海外から輸入する小麦や肉、ガソリンなどが値上がりし、四月の消費税率引き上げも加わって、出費はかさむ一方だ。

 片山家の収入は義和さんの手取り月約十七万円の給与と幸代さんのアルバイト収入六万円。二年前とほとんど変わっていない。中学生以下の子ども一人あたりにつき一万〜一万五千円が支給される児童手当で月六万五千円の収入があるとはいえ、物価の値上がりで実質所得が目減りする中、家計への負担が重くのしかかる。

 コメは長崎県で農業を営む幸代さんの実家に頼み、白菜や大根などの野菜も近所の農家から譲ってもらっている。節約に頭を悩ます両親の姿に、来春から受験生の長男は塾通いをあきらめると申し出た。「本当は何とか希望をかなえてあげたいのですが…」。幸代さんは、少し申し訳なさそうに話す。

 夜、近くにある義和さんの父母の家でくつろいだ片山さん一家。テレビで、大企業の年末ボーナスが上がるというニュースを見て「そんな景気のいい話、私たち庶民にはピンとこない」と、幸代さんはポツリ。

 中盤戦にさしかかった衆院選。アベノミクスの是非をめぐり小難しい経済データを並べた政策論争が目につくが、義和さんは「庶民の生活実態にもっと目を向けてほしい」と願っている。

 (社会部・佐藤裕介)

◆円安で生活の負担重く

 土居英二静岡大名誉教授(経済統計学)の試算によると、2年前の安倍政権誕生後の円安で、年収300万円の世帯で年間16万7109円、年収600万円の世帯では、21万6933円負担が増加した。

 項目別では、食料品が5.4%増、電気代が13.4%増、ガソリン代などを含めた自動車関係費が21.9%の負担増。土居名誉教授は「円安の負担は生活必需品にも重くのしかかるため、年収の少ない世帯ほど負担感は重くなる」と指摘している。