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選挙700億円に嘆き節 福祉、教育予算削減で「なぜ」

 「景気失速の今、なぜ?」。そんな疑問が上がる今回の衆院選。過去の例を見れば、東京スカイツリーの総事業費六百五十億円を上回る七百億円もの税金がかかるらしい。選挙費用の重みを、福祉や教育予算から見てみると−。

 「七百億円なんて想像もつかない」。名古屋市中川区の真島正美さん(61)は、ため息を漏らした。

 障害があり、生活保護費を受けているが、昨年夏から三年をかけて段階的に受給額が引き下げられており、生活は苦しくなるばかり。二百九十六円の業務用焼きそばを十食に分け、ほそぼそと食いつないでいる日々だ。最終的に引き下げられる生活保護費は、受給者全体で総額約六百七十億円。政治家は同じ額を一瞬にして使ってしまう。「弱い者いじめとしか思えない」と嘆いた。

 安倍晋三首相は女性の活躍に力を入れるという。ところが、待機児童の解消を目指し、保育士確保の名目で本年度予算に盛り込まれたお金は選挙費用の五分の一以下だ。

 愛知県北名古屋市で児童館を運営するNPO法人「子育てネットワークあすなろ」の水野美保代表(48)は「選挙は仕方ない」と諦めつつも「女性の活躍と言うのであれば、子育て支援にもしっかりお金を使ってほしい」。

 教育もそう。来年度の予算編成では、公立小学校一年生の「三十五人学級」を「四十人学級」に戻し、教員四千人分の人件費約八十六億円を削減するという財務省の提案が物議を醸している。その八倍以上もかかる選挙経費の支出はあっさり通るのに。教育評論家の尾木直樹さんは「教育に欠かせない八十六億円の予算を削ろうとする一方で、政治家の都合で、その何倍もの税金をかけて選挙するなんてナンセンス。子どもたちの未来をないがしろにしている」と苦言を呈す。

 未来と言えば、六年後に開催される東京五輪。文部科学省はメダリスト育成のため、若手選手の合宿費などの補助に約十五億円を要求したが、十三億六千万円に削られた。「もう少し予算が付いていても良かったのに…」と同省担当者は嘆く。

 ちなみに自治体レベルで見れば、七百億円は人口二十万人超の静岡県沼津市の年間の一般会計予算に相当する。エボラ出血熱の流行で国民が苦しんでいる西アフリカ・リベリアの国家予算(約五百億円)よりも多い。

 全国市民オンブズマン連絡会議(名古屋市)の新海聡事務局長は「安倍首相は数にものを言わせて選挙を私物化している。ただし、無駄遣いだと腹を立てても、私たち有権者が投票に行かなければ無駄遣いを追認することになる」と話し、しらけムードにはくぎを刺す。