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最高裁裁判官 国民審査

 「憲法の番人」と呼ばれる最高裁の裁判官が適任かどうかを国民が直接チェックする「国民審査」が十四日、衆院選とともに実施される。最高裁裁判官は全員で十五人。今回の審査は、二〇一二年十二月の前回衆院選後に任命された五人が対象となる。審査を前に本紙などは五人にアンケートを行った。最高裁裁判官としての信条や裁判員制度の評価と課題、「一票の格差」問題の解消に向けた国会の取り組みに対する考えなどを紹介する。

 今回の衆院選は、「一票の格差」が最大で二倍を超え、住む場所によって投票価値に差がある不平等が解消されないまま、投開票される。過去二回の選挙を最高裁から「違憲状態」と指摘されたにもかかわらず、国会は一部の選挙区の定数を増減させる「〇増五減」を実施しただけで、選挙制度の抜本的な改革を先送りしたからだ。

 最高裁大法廷は二〇一一年三月、最大格差が二・三〇倍だった〇九年衆院選を違憲状態と判断し、格差是正のため、定数を人口比例で配分する前に各都道府県に一議席を割り振る「一人別枠制度」の撤廃を求めた。最大格差が二・四三倍に拡大した前回一二年衆院選でも、昨年十一月の最高裁大法廷判決は、違憲状態と判断した。

 今回、審査の対象となる五人は「一票の格差」をどう考えているのか。

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 前回衆院選をめぐる昨年の大法廷判決に関与したのは、鬼丸(おにまる)かおる氏と木内道祥(みちよし)氏の二人。鬼丸氏は、違憲状態とした判決に同意したが、「憲法は国民の投票価値をできる限り一対一に近づけることを保障している」との個別意見を付けた。木内氏は、違憲とすべきだとの反対意見を書き、「今後の国会の動向によっては一部選挙区の選挙無効があり得る」と指摘した。

 最大格差が四・七七倍だった昨年七月の参院選をめぐる先月二十六日の最高裁大法廷判決には、五人全員が参加した。判決は昨年の参院選を違憲状態と判断した上で、「都道府県を単位として定数を設定する現行の選挙制度を速やかに見直すべきだ」と指摘した。

 この判決には、十五人の裁判官のうち、池上政幸氏と山崎敏充(としみつ)氏を含む十一人が同意した。山崎氏は「選挙制度の仕組みの速やかな見直しが強く望まれる」との補足意見を付け、抜本改革が実現しなければ一六年参院選は違憲になると示唆した。

 鬼丸、木内、山本庸幸(つねゆき)の三氏は、反対に回り、昨年の参院選を「違憲」とする意見を書いた。

 山本氏は「一票の価値の平等は唯一で絶対的な基準だ」として、参院選で初めて一部の選挙区を無効とする意見を述べた。鬼丸氏は「できる限り一人一票に近づけるのが憲法の要請。昨年の参院選は違法と宣言すべきだ」、木内氏は「議員一人当たりの有権者数が少ない順に無効ともできるが、今回は無効としないのが相当」と指摘した。。(加藤益丈)

 <違憲状態> 区割りなどを定めた選挙規定が「一票の格差」を生じさせ、憲法が求める有権者の投票価値の平等に反する程度に至っている状態を指す。判例では、違憲状態が長く続き、国会による是正のために必要な「合理的な期間」を過ぎた場合、違憲となる。ただ、合理的な期間について具体的な決まりはない。

◆審査の方法

過去22回 罷免された例なし

辞めさせたい裁判官に「×」

 最高裁裁判官は、任命後初めての衆院選と同時に審査を受ける。その後は10年が過ぎるたび、衆院選の際に審査がある。今回審査を受けない10人は、2009年か12年の衆院選の際に審査を受けている。

 審査では、有権者は「辞めさせるべきだ」と考える裁判官の欄に「×」と書く。「×」が有効票の過半数に達すると、その裁判官は罷免される。何も書かなければ信任とみなされる。「○」を含めて「×」以外を記入すると無効となるため、注意が必要だ。

 1949年の第1回から計22回、延べ167人が審査を受けたが、罷免された例はない。

◆国民審査を受ける最高裁裁判官アンケート(告示順、敬称略)

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<鬼丸氏の関与した主な裁判> 13年参院選「一票の格差」を違憲状態とした大法廷判決(今年11月)で違憲の反対意見。NHKの受信料請求権の時効を5年とした判決(今年9月)で裁判長

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<木内氏の関与した主な裁判> 13年参院選「一票の格差」を違憲状態とした大法廷判決(今年11月)で違憲の反対意見。朝鮮総連中央本部の売却を許可した決定(同)で裁判長

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<池上氏の関与した主な裁判> 13年参院選「一票の格差」を違憲状態とした大法廷判決(今年11月)で多数意見に賛成

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<山本氏の関与した主な裁判> 13年参院選「一票の格差」を違憲状態とした大法廷判決(今年11月)で「投票価値の平等は絶対的な基準として守られるべき」と違憲・選挙無効の反対意見。判事就任時に集団的自衛権の行使を憲法解釈変更で認めるのは困難と言及

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<山崎氏の関与した主な裁判> 13年参院選「一票の格差」を違憲状態とした大法廷判決(今年11月)で多数意見に賛成