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ネットよりやっぱりどぶ板 福岡・中間

選挙期間中、フェイスブックで支持を呼びかける田口善大さん。当選はしたが、ネットの効果は「見えなかった」という=福岡県中間市で

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 インターネットでの選挙運動が解禁されて初の地方選となった福岡県中間(なかま)市議選の投開票が参院選より一足早く十四日にあった。十九議席を争った二十一人中、数人の候補がネットを使ったが、果たして効果はあったのか。

 「ただいま本人が歩いてお願いに回っております」

 選挙戦の終盤、前議長の片岡誠二(47)は、大声を響かせる選挙カーと一緒に住宅街を歩いていた。保冷剤を首に巻き、住民の姿があれば帽子を取って駆け寄り、握手する。

 「きついけれど、これが一番の近道」。交流サイトのフェイスブック(FB)に活動風景や動画を載せ、ネット活用に取り組んだが、基本はいつもの“どぶ板選挙”だった。

 結局、二年前の前回選挙より三百六十票減らして当選。「ネットはマイナスにはならなかったと思うが、投票行動にはほとんど影響しなかった」

 北九州市のベッドタウンだった中間市。高齢化が進み、ネットの訴えが届く層は限られる。薬局店員の女性(54)は「家にパソコンがない高齢者が多い。ネットと言われても…」と戸惑いをみせた。

 平均六十歳の候補者たちの間でも「ネットで何を発信すればいいか分からない」「四キロ四方の小さな市。歩いて訴えた方が効果的」という声が多かった。

 ネットを積極的に奨励している共産党も例外ではない。前職の田口澄雄(63)は選挙前、短文投稿サイトのツイッターに挑戦しようとしたが、顔写真を表示させる方法が分からなかった。「地盤には高齢者が多い。ネットに時間をかけても仕方ない」と断念。得票数は前回から横ばいだった。

 新人の田口善大(25)は「若者に広めるにはネットが早い」とFBを開設。だが街頭演説を告知しても、ネットを見て訪れた人はゼロ。当選したが「ネットではなく、若さへの期待が集まった結果。ネットは今後の活動で生かしたい」と話した。

 若手の前職、中野勝寛(38)はFBで出陣式の写真を載せて以降、更新が止まった。「支持者を固める以外の余裕がなかった」

 ネット選挙運動が盛り上がらなかった理由に、中野は「争点があいまいだったこと」を挙げる。有権者の政治不信を感じつつ、どぶ板で落選を免れた。「一人でも多くの人に会って握手するのが選挙だという固定観念がある。でも今後は、ネットでも議員の資質が問われると思う」

 (文中敬称略、木下大資)

◆まだ手探りの状態

 早稲田大マニフェスト研究所の中村健・次席研究員の話 ネット解禁で、議員はこれまで地域で囲い込んでいた支持者以外にも情報を発信しなければならなくなった。まだ候補者も有権者も手探りだが、民意をくみ上げるという点では、国政よりも住民に身近な地方選の方が、ネットの持つ可能性は大きいかもしれない。

 <中間市議選> 生活保護費の不正受給に関与した市職員3人が逮捕されたことを受け「議会も責任を負うべきだ」として6月7日に自主解散。出直し選挙が参院選公示後の7月7日に告示され、14日がネット選挙初の投開票となった。当日有権者は3万6911人で、投票率は過去最低の48・64%だった。