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<出直し宰相>(下) 勝つためのキャラ

4月20日、東京・新宿御苑で開かれた「桜を見る会」で5人組アイドル「ももいろクローバーZ」とポーズを決める安倍首相

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 四月二十日、首相安倍晋三(58)が東京・新宿御苑で開いた「桜を見る会」。開花が例年より早く、もう葉桜だったが、安倍はこう言って会場を沸かせた。

 「大切なのは葉桜になってもまた咲くことだ。私ももう一度花を咲かせることができた」

 招待されたのはスポーツ、芸能など各界の著名人や友人、知人ら約一万人。安倍は人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」と笑顔で写真に納まるパフォーマンスも見せた。その姿を遠目で眺めていた春山高広(58)は「彼のキャラとは違う。首相になるとサービスも大変だなあ、と感じた」という。

 春山は安倍とは成蹊大の同学年で、アーチェリー部の仲間。「表に出たり、出しゃばったりするようなタイプじゃなかった。まあ、昔もアイドルは嫌いじゃなかったけれど。アグネス・チャンとか西田ひかるとかねえ」と振り返る。

 成蹊小学校時代の同級生、坂東和洋(58)もそう。今は東京・墨田区で洋菓子店を営む坂東は「授業中なんか静かなもんでした。先頭に立って引っ張ったり、何か目立つような発言や行動を見たことがない」と証言する。

 桜を見る会から約二十日後の五月十一日には、南こうせつのコンサートで舞台に上がり「あの素晴しい愛をもう一度」を熱唱した安倍。大学卒業後、一時期勤めた神戸製鋼所で上司だった矢野信治(70)は「社内では、あまりカラオケへ行くというタイプじゃなかった。当時は、かなりの音痴だったからねえ」と話す。

 庶民派のイメージを振りまく一方、タカ派を意識したパフォーマンスも。安倍は米映画「トップガン」ばりに自衛隊機の操縦席で親指ポーズを決め、フェイスブックには「『民主党は息を吐く様に嘘をつく』との批評が聞こえて来そうです」など、政敵を挑発する言葉を書き込む。学生や社会人時代の友人、知人は首をかしげるが、政界の受け止め方は少し異なる。

 「実は前回の方がイメージ戦略をやっていた。ネクタイはこうした方がいいとか、カメラ目線とか」と話すのは側近の一人で、現官房副長官の世耕弘成(50)。最初の首相就任は、あのパフォーマンスで有名な小泉純一郎(71)の後だった。

 当時、首相秘書官だった井上義行(50)は「やっぱり比べられちゃって。安倍さんは『俺は小泉さんみたいにああはできない』と言っていた」と振り返る。その安倍は六年前の参院選で自民党が大敗した責任をとって、首相を辞めた。

 井上は「前回の挫折で、安倍さんは自分がやりたいことをやるには総理で居続けなければならないという思いを強くした。そのためにはやはり選挙だと。今度の参院選に勝つためには何が必要かということを常に考えながら行動しているはずだ」と話す。

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 NTTの元広報部員で、二〇〇五年から党のメディア戦略を担当する世耕。その豪腕ぶりから、戦前のドイツ・ナチス政権下で宣伝相だったゲッベルスの名をとり「自民党のゲッベルス」とも揶揄(やゆ)されるが、数年前にこんなエピソードがあったと打ち明ける。

 「私のあだ名を聞いた安倍さんが『高校生の時に読んだから』と、ゲッベルスの関連本を貸してくれたのには驚いた。『末路は悲惨だから、君も気をつけた方がいいよ』と言われた、まあシャレでしょうけど」

 果たしてその言葉が助言なのか、自戒なのか、安倍の本心は分からない。出直し宰相を問う参院選が幕を開ける。(文中敬称略)

(この連載は、北島忠輔、谷悠己が担当しました)