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護憲派、さらに危機感 市民や識者ら「優先度低い」

2016年7月11日

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 改憲勢力が参院でも三分の二を確保した。改憲が現実味を帯びる中、護憲派、改憲派の市民や識者らはどう受け止めるのか。

 「信じられない。どんどん改憲に突き進む世になってきた」と憂うのは、あいち九条の会の代表世話人で俳優の天野鎮雄さん(80)=名古屋市千種区。「憲法は先の大戦の反省に基づき、非戦を強く決意して誕生し、今日までの国の流れを決めてきたのに」

 津市のアマチュア戦争史料研究家の雲井保夫さん(67)は、安倍政権が唱える中国や北朝鮮の脅威に触れ、「不安をあおる『票集め』にすぎない」と苦々しく語った。

 昨年は安保関連法案をめぐり世論が二分。法案撤回を求める署名を集めた福井大の森透名誉教授(教育学)は「非常に残念」と選挙結果を嘆いた。

 ただ、議席数とは裏腹に、共同通信社の出口調査では「安倍政権下での改憲に反対」が全国で半数を占めた。中部六県(愛知、岐阜、三重、長野、福井、滋賀)でも52%が反対し、賛成38%を大きく上回った。

 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法)は「安倍首相は改憲を争点から隠した。選挙後は公約にあるとして憲法改正に向けて動くのだろうが、経済で自民を選んだということ。改憲まで委ねていない有権者は多い」とくぎを刺した。

◆改憲派にも慎重論

 一方、改憲を求める市民は選挙結果に勢いづく。

 「憲法改正に向けて議論を加速させてほしい」。岐阜県各務原市の自動車整備業、横山智紀さん(29)は歓迎する。大災害時などに権利が制限される「緊急事態条項」は必要と思うからだ。長野県大町市の魚小売業、斉藤達男さん(82)も「日本の平和を守るには九条を改正し、自衛隊を軍隊と位置付けることが必要。改憲派が躍進できて良かった」と喜んだ。

 とはいえ、拙速な改憲には、安保法制を肯定する同志社大の村田晃嗣教授(アメリカ外交)も「にわかに改憲に向けて動きだすとは思えない」と語る。熊本地震の被災地復旧や英国の欧州連合(EU)離脱による経済情勢を踏まえ「改憲の優先度は低い」とみる。

 「個別的自衛権行使に限り自衛隊を憲法で明記する改正が必要」と主張する愛知大大学院の落合俊行教授(憲法)は「憲法で公権力を縛る立憲主義の軽視と、批判に不寛容な安倍政権の姿勢に危機感を抱く国民が多いのでは。当面九条改正論が浮上する可能性はないだろう」と述べた。

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