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コラム

大久保、滑り込み日本に残されていた最高の駒

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 記者会見場に設置されたテレビカメラは40台近くあっただろうか。主要各局が生放送をしたW杯のメンバー発表。普段、サッカー界にどっぷりと浸かっていると意識しないのだが、こうしてみると改めてW杯というものが日本国民にとっての関心事になっていたことに気づかされた。

 ザッケローニ監督の口から淡々と語られた23人の名前。そのなかで記者たちを大きくどよめかせたのが「オオクボ」という響きだった。川崎フロンターレの大久保嘉人。その選出は大久保本人の言葉を借りれば「サプライズ」となるのだが、半分は驚きであり、半分は当然の選出だろう。

 まず驚きの部分は、ザックジャパン全49試合でわずか1試合にしか招集されていなかった選手を、ここにきてメンバーに加えたことだろう。大久保が最後に日本代表のユニフォームを着たのは2012年2月14日のアイスランド戦。それも45分間だけだった。奇をてらうことを嫌う慎重派の指揮官の性格を考えると、意外だったともいえる。

 一方で当然といえるのは、大久保がここ2シーズンで見せているパフォーマンスの高さだ。昨年は26ゴールを挙げJ1得点王。今年も8ゴールで日本人最多得点者だ。どの国でもリーグ得点王が代表チームに招集されないというのは国民が納得しない。その国のリーグが否定されている感じがするからだ。そして、もしメンバーから外して失敗したときには大きな批判にさらされるのは目に見えている。

 チームの和を重んじるザックジャパン。ザッケローニ監督は常々「大久保の実力は分かっている」と話していたが、選出にはここにきてのチーム事情も関係しているだろう。1トップの一番手と目された柿谷曜一朗の不調。さらに今シーズンの無得点に終わった香川真司につきまとうゴール感の不安。それをすべての面で解消する切り札が大久保だったのだろう。

 守備力も含めたサイドでのプレーは前回W杯でも証明済み。さらに開花した1トップでの得点力。ブラジルW杯を直前に最高の駒が残されていたのは、日本代表にとっての幸運と思うべきだろう。

 岩崎龍一(いわさき・りゅういち) サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。