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紙面記事

脱支配で速攻の時代大会総括

メキシコ守備陣を突破するオランダのロッベン=フォルタレザで(AFP・時事)

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 「サッカー王国」ブラジルで64年ぶりに開催されたワールドカップ(W杯)は、ドイツが1990年イタリア大会以来24年ぶりの優勝を果たして幕を閉じた。今大会の1試合平均得点は2・67。前回南アフリカ大会から0・4点増え、過去5大会では98年のフランス大会と並んで最も得点が多い大会となった。

 上位進出国を見れば、アルゼンチン、オランダ、コスタリカなど守備を重視するチームが多かった。その中で得点が増えたのは、カウンター攻撃の精度が向上したからといえる。各国ともボールを奪った瞬間、走りだした5、6人の選手がトップスピードのままパスをつなげ、シュートに持ち込む姿は迫力があった。

 背景には守備戦術の進化がある。前回大会はスペインがショートパスでボール支配率を高める「ポゼッションサッカー」で優勝。同時期にスペインのバルセロナが同じスタイルでクラブ世界一に輝いたこともあり、各国代表やクラブが模倣するようになった。

 そのため4年間で対抗策も浸透した。前線から激しく重圧をかけ、パス回しの起点となる相手のセンターバックやサイドバックにロングボールを蹴らせる。自陣でボールを持たれたときは全体が下がり、人数をかけてゴール前のスペースを消す。今大会でスペインが1次リーグで敗退したように、今や「ポゼッション(ボール支配)」だけで守備網を崩すのは難しくなった。

 代わりに上位進出国が重用したのがカウンター攻撃だった。ボールを奪った直後の数秒間は相手の守備陣形が整っておらず、敵陣にスペースが広がる。その短時間に狙いを徹底し、練習からパス方向や動き出しのタイミングを意思統一していたとみられる。

 メッシ(アルゼンチン)ロッベン(オランダ)ネイマール(ブラジル)らドリブラーが大会で活躍したのは、ドリブルのスペースがあるカウンター攻撃との相性が良かったからだ。優勝したドイツも、ブラジルとの準決勝で相手ゴール前で何度も数的優位をつくり、大量7得点を挙げた。

 サッカーの戦術は日進月歩。4年後のロシア大会はカウンター攻撃への守備の対策も進んでいるはず。各国が今後どこに得点チャンスを見いだしていくのかが楽しみだ。 (リオデジャネイロ・原田遼)