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紙面記事

<職人技で輝け>(3)香川、ドリブル

3月のニュージーランド戦の前半、巧みなドリブルで仕掛ける香川=国立競技場で

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◆パス禁止、伸びた才能

 目の前に立ちはだかる相手を、緩急を使って次々とかわしていく。香川真司(25)=マンチェスター・ユナイテッド=の長所の一つが、鮮やかなドリブルだ。3月5日に行われた国際親善試合ニュージーランド戦でも、香川がドリブルで積極的に仕掛け、チームを勝利に導いた。

 今や日本代表になくてはならない存在となった香川。天性の才能を感性と努力で伸ばしてきた。「何じゃ、こいつは、忍者か!」。香川との出会いをこう話すのは、神戸NKクラブの大木宏之さん(現センアーノ神戸代表)。視察に行った神戸市の選抜チーム。小学4年生の香川は格段に目立っていたという。

 その香川が数カ月後に神戸NKクラブに入団した。大木さんが驚いたのは、香川の俊敏さだ。友達と鬼ごっこをしても、するすると逃げ回り、捕まらない。「仕掛ける部分を伸ばしたら、すごいことになる」

 もともとパスを出すセンスはあったという。しかし、俊敏さを生かすのはパスよりもドリブル。そこで香川に一人で突破させることを意識させた。兵庫県の選抜チームに選ばれたとき、他の指導者から「ボールを持ちすぎだ」と指摘されても、そのままボールを持たせた。香川自身も時間があると、Jリーグの観戦に出掛け、カズら当時の一流選手のドリブルをまぶたに焼き付け、能力を伸ばしていった。

 中学になると、武者修行のため、親元を離れて仙台に移り住んだ。入団したのはFCみやぎバルセロナ。個の技術向上を目指すクラブチームへの入団を自ら決断した。香川ら選手に課せられたのは「パス禁止」。相手との一対一で横にパスを出したら「逃げるな」と叱られる環境で、ドリブルで突破する技術を磨いた。香川は寮の廊下では、はだしでドリブルの練習をしたという。

 香川は今、世界有数のビッグクラブでプレーする。今季は満足のいくシーズンにはならなかったが、独創的なドリブルは健在だ。「パスもドリブルも、シュートもできる位置にボールを置くようにしている」と香川。個性を重視した二つのクラブで育まれた才能を胸に、香川がブラジルに赴く。

 (禰宜田功)

 <かがわ・しんじ> 初のW杯日本代表。10年W杯はサポートメンバー。FCみやぎバルセロナユース出。北京五輪代表。17歳でC大阪入りし、10年にドルトムント(ドイツ)移籍。12年からマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)。国際Aマッチは54試合に出場し17得点。FW。172センチ、64キロ。25歳。兵庫県出身。