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紙面記事

“ジョーカー”大久保1人でも点奪える力

W杯の日本代表に選ばれ、報道陣が用意した手作りのW杯トロフィーを笑顔で掲げる大久保嘉人=羽田空港で

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 淡々と無表情のまま、ザッケローニ監督は読み上げた。「オオクーボ」。16番目に発した、大久保の名。報道陣のどよめきも気にせず、すぐに続きの選手の発表に移った。

 大久保の選考理由を聞かれると「経験とゴールへの嗅覚に優れていることは知っていたが、それ以外の選手の成長を見たかった。ぎりぎりのタイミングで呼んでも計算できると思っていた」とさも当たり前のように答えた。

 「そうした考えは皆さんに説明していたはずだ」と報道陣に強調し、「サプライズ」という見方を否定するような姿勢を見せた。

 確かに過去に同様の趣旨の発言はしていたが、早い段階から構想にあったかどうかには疑問が残る。

 4年間で大久保が呼ばれたのは2012年2月の一度だけ。監督が選考基準で示した「戦術理解」の条件を満たさず、常連組の22人との融合に不安が残る。それは今年の3月や4月に行った合宿に呼べば、改善できた問題だ。

 理由として考えられるのは、大久保の得点力が監督の予想以上に持続されたこと。昨季リーグ戦で得点王に輝いたが、一過性の調子ではなく、今季も3月の開幕から日本人最多の8得点を挙げている。

 監督は「どんな相手に対しても主導権を握るサッカー」とW杯での戦い方を語ったが、強豪国相手にどこまで通用するかは未知数。さらに1トップのレギュラーの柿谷は所属クラブのリーグ戦で12試合1得点と本調子でない。これまで積み上げた戦術が機能しない可能性もある。

 大久保は2人、3人に囲まれてもドリブルで突破でき、30メートル以上離れた位置から無回転キックでゴールを決められる。劣勢でも、1人で点を奪える力がある。

 規則性のある22枚のカードと、1枚のジョーカー。23人の選考には、初めてのW杯を体験するザッケローニ監督の危機管理が垣間見える。 

  (原田遼)