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オリンピック 特集・連載

<クローズアップ ソチ> 資金集め、新スタイル

女子ハーフパイプのメダル授与式で銅メダルを手に笑顔を見せる小野塚彩那=時事

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 新種目のフリースタイルスキー女子ハーフパイプ(HP)で銅メダルを獲得した小野塚彩那(石打丸山ク)は、知人や一般から会費を募る「サポーターズクラブ」の援助で遠征費を捻出し、五輪への道を切り開いた。インターネットを通じて広く資金を募る「クラウドファンディング」を活用する選手も多く、企業抜きには成り立たなかった構図が変わりつつある。

 全日本スキー連盟(SAJ)は、五輪や世界選手権で活躍が期待される選手を強化指定して活動費を支給しているが、スキーHPが対象となったのは昨年。海外遠征も自費で賄うしかない状況だった2011年、地元関係者らを中心に「小野塚彩那オフィシャルサポーターズクラブ」が発足した。

 年会費は一口5000円。ホームページや地元のつてを活用し、企業5社と個人会員200人を集めた。クラブの片山強代表(63)は「200人も集まったのは予想外。活動費は年間350万円ほどだが、昨季はクラブの支援ですべて賄った」と話す。この資金で欧米の大会を転戦。そこで積んだ実績で、今季は強化指定を受けた。小野塚は「地元の応援があったから今ここに立てているし、メダルを取れたと思う」と感謝する。

 インターネットで幅広く活動資金を募る手法をクラウドファンディングと呼ぶ。ホームページを通じて一口1000円のサポーターを募集し、約800人の登録者を集めたスキー距離男子のレンティング陽(アキラ)ら複数のソチ五輪代表が活用している。代行する企業や団体もあり、フリースタイルスキー女子スロープスタイルの高尾千穂(尾瀬ク)、ノルディック複合の渡部善斗(早大)、リュージュ男子の金山英勢(札幌学院大)が利用して支援を募った。

 スキークロスで18年平昌五輪を目指し、今春からアスリート支援企業「日本の応援団」を通じて資金集めを始める長野県出身の吉越一平(28)は、所属企業との契約が満了し、今季は貯金を切り崩しながら遠征した。現在は岐阜県内のスキー場でアルバイトをしながら活動資金を集めているが「自分一人で働いても限界がある。多くの人に支援してもらえるならありがたい」と期待する。

 海外遠征費など高額の費用を要する冬季競技では、競技生活に苦労する選手が少なくない。日本オリンピック委員会(JOC)は10年にトップ選手の就職を支援する事業「アスナビ」を立ち上げたが、恩恵を得られたのはアイスホッケー女子のように既に五輪出場が決まっていたか、過去に五輪経験のあった選手など一部に限られる。

 ボブスレー元日本代表の吉岡康典(38)は「冬季競技で五輪に出るには長期遠征が欠かせないから、勤務先の理解なしに続けるのは難しい。実業団に所属できる一部を除き、アルバイトなどで生計を立てる人が多い」と明かす。

 クラウドファンディングで幅広く資金を集めるのは簡単ではないが、選手側も工夫を凝らしている。大会結果をこまめにメールで報告するのはもちろん、高額出資者は氏名をホームページに掲載し、応援する誇らしさをくすぐる。中には使った用具をプレゼントしたり、会食や個人レッスンに応じたりするなどの特典を用意する選手も。小野塚の場合、ホームページの会員限定コーナーにメッセージを掲載し、試合結果を伝えたという。

 吉越は「小野塚選手のような成功例が出たのは、同じような立場の選手としてうれしい。僕もそういうふうになれたら」と意気込む。4年後、吉越ら“第2の小野塚”が何人、五輪の表彰台に乗れるか注目だ。

 (吉岡雅幸、対比地貴浩)