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パラリンピック 紙面記事

小池、ノートでコース攻略 軽度記憶障害

小池岳太選手がコースを覚えるために書いたノート

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 ポケットに入るほどの小さなノート。川のような二本の曲線の間に、方向を示す矢印や数字、記号が書き込まれている。アルペン代表の小池岳太選手(31)=長野県岡谷市出身、セントラルスポーツ=はレース前、下見に必ずこのノートを持って行く。四年前から始めた習慣だ。

 雪面の起伏や荒れ具合、旗門を通った後に飛び出す方向。斜面を滑っては止まり、書き込む。「こんなこと、誰もしてないから恥ずかしいんですけどね」。勧めたのは、東京都内で治療院を営む鳥居明さん(49)。もう十年以上、二人三脚で歩んできた。

 Jリーガーを目指していた大学一年の時、交通事故で左腕が動かなくなった。障害者スキーの世界へ入ったころから、トレーニング指導や治療を受けている。

 小池選手には気になることがあった。約束の時間を忘れてしまう。携帯電話をなくす。「おかしい」とは認めたくなかったが、鳥居さんに促され、いくつも病院を回った。ごく軽度の注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。

 発達障害の一つで、注意力が散漫になりやすく、複数のことを記憶しにくい。鳥居さんは小池選手を自宅近くに住まわせ、日々の出来事と予定をノートに書かせた。練習方法も変えた。「集中力の欠如がけがにつながるから」と、スキーをはく時間を短くし、筋力を徹底して鍛えた。

男子スーパー複合立位前半回転に出場した小池岳太選手=ソチで(共同)

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 前回バンクーバー大会の半年前に、左膝の靱帯(じんたい)を断裂。焦る小池選手を、必死の治療でスタートゲートに立たせた。その後手術を受け、鳥居さんの指導によるリハビリと筋トレで自己ベストの成績を手にした。「信じるしかないですよね」。今も二種類のノートをつける習慣は変わらない。

 「思い切ってやってこい」。二月に治療院で握手を交わし、小池選手はソチに入った。大会では今のところ、スーパー大回転の九位が最高成績。残り種目で巻き返し、日本で待つ「第二の父」に朗報を届けたいと思っている。

(ソチ・斎藤雄介)