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第17回 日本海文学大賞 小説部門大賞

小説部門大賞

木島次郎さん

「次は親子の感情を軸にした小説を書いてみたい」と話す木島次郎さん=新潟県柏崎市で

現代のおとぎ話狙った
『桜の花をたてまつれ』 木島次郎さん




 〜一昨年の佳作に続く受賞が大賞でした。

 「びっくりしました。いただけるとは思っていなかった。実は締め切り直前に規定より五十枚多いことに気づいて、あわてて削ったんです」

 〜描こうとしたのは。

 「今回のような傾向は初めて。今を切り取って物語を紡ぎたい、現代のおとぎ話を書きたいと考えました。前回の選評で、ある選考委員が『もう思い出話はやめよう』と書かれた。その言葉が記憶にありました」

 〜作品はどんなふうに生まれたのでしょう。

 「辻邦生さんの『西行花伝』に、タイトルに使った歌が出てきます。冒頭にも書いた<仏には桜の花をたてまつれ>。ああこれだ、と思ったのが始まりです」

 〜弔い師という主人公の設定が目を引きます。

「十年ぐらい前、知人の経営する葬儀屋が人手不足で、三カ月ほど手伝ったことがあります。遺体をふいたり、枕飾りをしたり、葬式の司会もやりました。柏崎に来てからは、えんま市という夏の風物詩で大阪のテキ屋の親分さんと知り合った。それが合体したんです。みんなあまり書いてない世界で、おもしろいだろうと」

 〜実体験が基にある?

「家の近くに江戸期の豪農の暮らしを伝える旧家があります。庭が好きでよく見ていた。葬儀屋とテキ屋と古民家。材料と舞台がそろったんです。豪雪地帯の雪解け風景も織り込みたいと思いました。まったくの絵空事ではないんです」

 〜「命を祭る 百花葬祭」という葬儀屋の名前が印象的です。

「満開の桜の下の葬儀なんて、それ自体がおとぎ話ですよね。それと古民家の再生がよく話題に上りますが、移築すると周囲の景観が壊れます。賛成できません。作中講演する大学教授に自分の考え方を託しました」

 〜小説を書き始めたのはいつから。

「大学生のころ同人誌に書いてました。第一作が文学界の同人雑誌評に載って味をしめました。本格的に始めたのは、新潟に来てからです」

 〜執筆の時間は。

「夜中の一時ごろから四時ごろまで書いて、それから朝まで寝てという生活です。仕事の原稿も書きますけど、それがほぼ毎日です」


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 きじま・じろう 1951(昭和26)年、広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大手広告代理店勤務、雑誌記者を経て地域新聞記者。「北方文学」同人。第17回コスモス文学賞短編小説部門で文学賞受賞。第15回日本海文学大賞で「湯ノ川」が佳作に選ばれた。新潟県柏崎市在住。

「桜の花をたてまつれ」各回紹介

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