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第16回 日本海文学大賞 小説部門大賞

小説部門大賞

長野修さん

忘れえぬ病の体験
『朱色の命』 長野 修さん




 −命の危うさというテーマが、明確に表現されていましたね。

 長野 私は、書きたいことは先にあって、書き始めるからです。今回のテーマの根底には、私が子どものころにかかった「腸重積」という病気の鮮明な記憶があるんです。病院をたらい回しされて、あと一時間遅かったら、命はなかったと医師に言われました。それと娘の病気で、夜道を福井市の病院まで車で走ったこともあり、それらをリンクしたら書けそうだと思ったのです。

 −ライターというお仕事との関係は?

 長野 これまで五十冊前後の本を手がけてきましたが、医療関係の本も書きましたから、関係はあるでしょうね。作中に、女性ライターが精子バンクから精子を選ぶシーンを書きましたが、女性ライターの性格をうまく引き出せたと思うんです。稼いでいるライターは、男性と競争していてドライですからね。

 −九州と福井が舞台に出て来ますね。

 長野 九州は私の故郷の佐賀、福井は妻の郷里です。それで、二つの地域の川を、対照的に象徴させる意図もあるんですが。父が病院で死につつある佐賀の川は、死のイメージ。一方の九頭竜川は、娘が生きようとする生のイメージ。

 −本職の合間に、創作するのは大変でしょう。

 長野 自分のものを書くのは、どうしても夜半になります。ライターですから、書くことは本来好きなんですよ。元々マスコミ志望でしたしね。書くことからは、逃げられない。

 −才能があるんです

 長野 いや、もしあるなら、二十歳ですごい作品を書いていますよ。私の場合は、こつこつと書くタイプでしょう。わかりやすい文章というものを、以前に厳しく鍛えられましたから。

 −これからのテーマはあるんでしょう。

 長野 いくつか持っています。一つは医療の問題です。がん治療は、手術して抗ガン剤を与えるのが、今の主流でしょう。でも、それで半年永らえてナンボのものか、と思うんです。手術の方向でなく、あと何カ月かの命をいとおしむ生き方があってもいいのではないか。そんな作品が、書きたいですね。


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 ながの・おさむ 1960年、佐賀県出身。明治大学政経学部を卒業し福岡県にあるフクニチ新聞に入社。1年で退社し、東京都内の編集プロダクションに入り、音楽雑誌や医療関係書の取材、編集、著作にたずさわった。現在はフリーライター。神奈川県茅ケ崎市在住。

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