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第15回 日本海文学大賞 小説部門大賞

小説部門大賞

中条佑弥さん

小説『誘蛾灯』で大賞を獲得した中条さん。「能の構成を使って書いてみました」と語った=東京都大田区の洗足池で

『能』形式で郷里描く
『誘蛾灯』 中条 佑弥さん




 −受賞作の舞台は、福井県のご郷里ですね。

 そうです。僕が中学生のころは、作中のように季節ごとに、よそから移ってきて漁をする家族がいたんです。そしてウニとかナマコ漁をしていました。

 当時、郷里の家の大半は漁業で、女性は田畑を受け持っていましたね。海でははえ縄漁もして、タイとかグジ(アマダイ)を捕っていました。中には底引き網漁をする家もあって、若狭湾の口あたりまで出ていたのでなかったかな。

 −お坊さんが重要な働きをしているように感じたのですが。

 実はストーリーに苦心しましたが、能のスタイルを取り入れてみたんです。ご存じのように、能では諸国を行脚する僧が霊と出会い、霊からその地の物語を聴きます。そして霊は成仏し、消えていきます。

 その形式をいかして三カ月で書きました。しばらく寝かしてから読み返し、繰り返しの描写、文字の間違いなどを訂正したんですがね。話はフィクションです。同級生にお寺の子がいましたが、彼は今サラリーマンですよ(笑い)。

 −小説を書き始めたきっかけは何でしたか。

 池波正太郎とか藤沢周平、三島由紀夫などは読んでいましたから、いずれはとは思っていました。ところが七年前に大腸がんで入院したんです。それで「先を待ってはいられない。早くやろう」と始めたんです。でも男女のことは苦手だし、サスペンスは組み立てがむずかしいですからねえ(笑い)。

 −中条さんには海を舞台にした作品が多い…。

 今回の作品は一部なんですが、全部で十話になる小説を、原稿用紙六百枚書き上げてあります。いずれは日の目をと思っていましたが、まだ引き出しに眠っています。この受賞をきっかけにぜひ一冊にまとめ、出版したいと考えているんです。だから大賞受賞には、本当に感謝しています。

(聞き手・報道部 今宮久志)


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 なかじょう・ゆうや 本名・中間弥寿雄(なかま・やすお)。1946年6月1日、福井県大飯町生まれ。同県立若狭高校から、東京大学文学部英文科を卒業し、学習研究社に入社。現在は編集総務部記事審査室に所属。2000年には作品『岬の村』で第11回日本海文学大賞奨励賞を受けている。東京都杉並区在住。

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