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第12回 日本海文学大賞 小説部門大賞

小説部門大賞

藤田武司さん

『増毛の魚』 藤田 武司さん




 ── 読むと、どこまでフィクションかと迷ったんですが。

 ほとんど実話なんです。曾祖父(そうそふ)が幕末に増毛に渡り、父の代で松江に来ましたから。それに私も雑誌「アンアン」で、旅の取材で増毛に行き、そこで親類に出くわしました。ただそれは、少し昔のことですよ。昔の話にすると読者がついて来ないから、新しいことにして書きました。

 ── カチッとした文章が印象的でした。

 文章の特徴は、自分でよく分かりませんが、垂れ流ししないでキリッとした文にしたい、とは思っています。私は子母澤寛とか、長谷川伸、正岡容といった作家が好きなんです。今はいい日本語を書いたからといって売れる時代ではないですが、日本語のレトリックをつかんで、ちゃんと使えることにあこがれています。

 ── 雑誌記者だった影響はありませんか。

 どうですかね。僕は記者というのは情報の寿司(すし)屋だと思うんです。取材してきた素材を、お客さんが食べやすいようにご飯にのっけて食べさせる?。しかし自分の小説となると、さらに煮たり焼いたりするわけですからね。

 ── ところで「増毛の魚」は、書きたかったテーマに思えるんですが。

 “センミツ”と言われて粉飾の多い父でしたが、若いころは巌谷小波の弟子だったんです。話はうまかったですよ。聞き飽きて「ウソつけ」と思ってしまうんですが、ついつい引きつけられてしまうほど。

 ── まだまだ材料はあるでしょうね。

 一作では語り尽くせませんね。三部作にしたいんです。中年に栄光を極め、その後みじめになって、最後は列車からの事故で亡くなった父の汚名返上に、まだ書きたい。そんな意味でも、増毛に生まれ松江に移った父の話で受賞するなんて、本当にうれしいですよ。


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 ふじた・たけし  1942年12月6日、松江市生まれ。京都府立嵯峨野高校を卒業し、早稲田大学第二文学部を中退。出版社に勤務し、週刊誌の『平凡パンチ』や女性誌『アンアン』などで、各種の記事を担当する。著書に『いろはに放浪』(評言社)『汽水の街へ』(早川書房)連載『野球武芸帖』(「野生時代」)がある。

「増毛の魚」各回紹介

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