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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

就活支援 呼び方前向きに ニートじゃなく遅咲き

水間鉄道で働く高田祐作さん。「レイブル超就活を通じて、自分の長所や弱点も分かった」と話す=大阪府貝塚市で

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大阪発「レイブル」広がる

 働く意思を持ちながら無職の期間が長いなどの理由で仕事探しに踏み出しにくくなっている若者を、「レイブル」と呼んで支える動きが広がりつつある。レイブルとは英語のlate bloomerを略し、「遅咲き」の意味。先に定着した「ニート」という言葉の否定的な印象を拭うとともに、いまだに新卒が偏重される就職のあり方に一石を投じる狙いもある。発信地の大阪で取材した。(担当・日下部弘太)

無職から正社員 

 「夏は大変でした。レールは鉄だから、作業がすごく暑かった」。線路の上で高田祐作さん(25)が笑う。大阪府貝塚市の鉄道・バス会社「水間(みずま)鉄道」で、嘱託社員として働き始めて1年がたった。それまで3年間、無職だった。

 仕事は線路や踏切信号の保守点検。レールのゆがみやポイントに異常がないかをチェックする。働きぶりが認められ、11月には正社員になる。

 大学を2年の半ばで中退し、1年ほど飲食店でアルバイト。その後3年間、福岡の祖母宅で過ごした。バイトでためたお金が尽き、仕事を探しに大阪に戻った。「全く目標がなかった」。技術関係の仕事に興味があったが、経歴を考えると難しいだろうと思っていた。「祖母宅でやったのは農作業の簡単な手伝いだけ。履歴書に書けない」

 大阪に来て偶然、「レイブル超就活」という無職の若者を対象にした就職支援イベントが参加者を募集していると知った。受け入れ企業10社の中に、水間鉄道があった。

昨年の「レイブル超就活」の5日間講座の様子(スマイルスタイル提供)

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無給で職場研修

 レイブル超就活は、大阪市西区のNPO法人「スマイルスタイル」(スマスタ)が昨年9月に初めて実施した。個別の面談と5日間の「働くテクニック講座」を経て、一般企業と介護事業の2コースに分かれて研修。一般企業コースは、飲食店やアパレル販売などの会社で1カ月間無給で働き、双方が納得したらアルバイトや契約社員として勤務できる仕組み。履歴書は要らない。

 一般企業コース希望者は、5日間の講座に81人が参加。働いていない期間が5年、10年と長期にわたり、目を合わせて話せない人も多い中、25人が職場体験に進み、うち16人がそのまま就職した。その時は就職につながらなかった人も、その後半数以上が職を見つけた。

「多様な働き方を」

 スマスタのメンバーは20〜30代前半の若者。支援される側と同年代で、同じ目線で支えられるのも強みだ。期間中のサポートのほか、終了後も交流会を開き、関わりを続ける。高田さんもたびたび参加。「久しぶりに他の人と会い、別の仕事の話も聞けて励みになる」と喜ぶ。

 スマスタは大阪府の委託を受けて若者支援に乗りだした。活動にあたり、偏見の強い「ニート」に代わる言葉を探した。塩山諒代表(28)が話す。「ニートという言葉は『怠けている』とか『親が悪い』とか、批判的なイメージが付きまとう。でも無職の若者たちの多くは自主的に動こうとしていて、実態にそぐわない」

 そして見つけたのが「レイト・ブルーマー」という言葉。海外では学校卒業後にすぐ就職せず、旅やボランティアをする若者をそう呼んで肯定すると知った。

 不登校や引きこもりを経験した、就職失敗からの立ち直りや病気の回復途上にある、資格を取ろうとしている−。若者の多様な姿を、未来に向けて表現する言葉が「レイブル」だった。

 多様性の尊重は、就職のあり方の幅を広げる発想にもつながる。「若者は5年、10年フラフラしていてもいい。頑張る意志があれば受け入れる。社会がそんなふうに転換した方が、本当の意味での人材育成になると思う」。スマスタは5月、さまざまな仕事の紹介や、働き方を考える事業も始めた。レイブル超就活は今年も11月に開かれる。

「かつてのおせっかいおじさん、おばさんに代わる就職ネットワークをつくれたら」と話すスマイルスタイルの塩山諒代表=大阪市西区で

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「負の印象ない」各地で共感

 「レイブル」の名称を使った活動は、各地に広がっている。神奈川県藤沢市の支援施設「ユースワーク藤沢」は6月、「レイブルパーティー」を始めた。無職だけでなく、不登校や引きこもり、仕事がなかなか続かない人の集いの場として毎月開催。由井真理子施設長は「言葉に共感した。これから花開く機会はいくらでもあるのだから」。

 福岡市では昨年3月、自助グループ「福岡レイブルネットワーク」が設立された。現在無職の人も、元無職者もおり、2、3カ月ごとにテーマを決めて会合を持っている。代表の沖勇人さん(25)は今年の春まで2年間無職だった。「自分と向き合う期間として、逆に誇りに思っている。レイブルは負のイメージを打ち崩す言葉。感銘を受け、自分たちも集まりをしたかった」と話す。

 名古屋市で8月末に開かれた親向けの講演会は、副題に「レイブルのための保護者セミナー」と銘打った。主催した愛知県労働協会の奥村誠治主任主査(55)は、「親に対する勇気付けの発信として、前向きに子どもと接してほしいとの思いから、この言葉を使った」。年度内に再び、「レイブル」と題してセミナーを開くことにしている。

 いわゆる「ニート」とは 厚生労働省は、「15〜34歳の無職かつ求職活動をしていない人(非労働力人口)のうち、通学も家事もしていない人」をニート(若年無業者)と定義している。2002年以降、62万〜64万人で推移し、10年には60万人だった。

 ※次回は30日付Spot&Place。霊峰・白山に抱かれた秘境の滝を目指します。

 

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