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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

ナリワイ生み出せ “三足のわらじ”で納得人生

 生きるために働いているはずが、いつの間にか残業や休日返上と、仕事に追われ、健やかに暮らす時間を奪われていないだろうか。そんな状況は真っ平ご免と、自分らしい働き方を楽しんでいる人たちがいる。共通するのは、いろんな仕事を生み出す前向きな姿勢。名付けて「三足のわらじ的生き方」。その心とは−。

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広がる人脈「技能が貯金」

 木造校舎での結婚式プロデュース、町家の宿貸し出し、文筆業…。東京都在住の伊藤洋志(34)さんは現在12の仕事を持つ。

 「ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方」を提唱し、2012年夏に同題の本を著した。ナリワイ(生業)とは個人レベルで始められ、やればやるほど頭と体が鍛えられ、技が身につく仕事。お金のために自分の時間と健康を犠牲にしない。

ベンチャー1年で退職

 京都大大学院を修了後、都内のベンチャー企業に就職。雑誌の広告営業などを任された。飛び込み中心の営業はしんどく、終電で帰る日も多くて、ストレスで深刻な肌荒れに。新雑誌の創刊をやり遂げて1年で退職。働き方を変えると決めた。

 療養後の07年、最初に企画したナリワイが「モンゴル武者修行ツアー」。大学時代に電気不要の冷蔵庫を作る実験で延べ1カ月近く現地に滞在。遺跡巡りなど観光中心のツアーが多い現状に、もっと現地の文化を理解する旅があればと思い、知り合ったモンゴル人の旅行業者と始めた。

最初の仕事が次を呼ぶ

 最初の仕事が次の呼び水に。農業雑誌の仕事で和歌山県新宮市の廃校を拠点にパン作りと農業を営む夫妻を取材。農的生活を若者らに伝えている夫妻から、モンゴルの経験を買われ、田舎暮らしの講座を持ち掛けられた。

 田舎暮らしの課題と言えば仕事。だったら手に職を付ける企画にしようと、田舎でパン屋を開くための集中講座を08年から始めた。約30人が受講し、半数以上が熊野地方など田舎に移住した。

結果出せば事業は成長

 「自分の生活に必要とか、もうちょっと良いものができたらと工夫する中で生まれた」ナリワイ。会社と自宅の往復だったベンチャー企業時代に比べて人脈は広がり、当時は20万円の月給が生活費などにほぼ消えたが、現在は毎年30万〜40万円の貯金が可能に。

 「それより技能が貯金」という。住宅の解体や床張り、漆喰(しっくい)の壁塗りの技を習得。水害に遭った新宮市の2階建て住宅を毎月5000円で借り、友人らと修理して住めるように。生活の支出は減り、体も鍛えられた。

 「続ければ技術は上達。いいものをつくり、分かりやすく伝えていけば事業は成長する」と手応えを話す。事業の全体を自分でみるから、直接的なフィードバックが得られることも強み。「会社勤めでも世界を二つぐらい持った方がいい。気分も楽です」と勧める。

お客さんの提案に応えようとして仕事の幅が広がったと話す松本さん=石川県野々市市で

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石川・野々市の松本さん

デザインから写真、コーヒーまで

「知らないこと知る好機」

 石川県野々市市でデザイン事務所UNIT.DESIGN(ユニットデザイン)を営む松本博行さん(43)は顧客や知人の依頼に応えるうち、仕事の幅が広がった。

 カタログなどの紙面、ウェブサイト、住宅・店舗、企業のグッズ、職場の緑化など幅広いデザインを手掛け、カメラマンや出張コーヒーの店主も。

 製版会社のデザイン部門などで働いて独立。当初は商品のカタログやパッケージの仕事中心だったが、「難しい案件でも松本ならやれるかも」との期待がうれしくて、新たなデザインやウェブの技術を今も研究する。勉強のため、いろんな人と会うことが、人生の刺激にもなっている。

 仕事を絞らないことは、経営や効率的にプラスとは言い難いとも感じるが、「知らないことを知るチャンスになる」と意欲的。「仕事も私生活も人との関わりが一番大事。若者はどんどん外に出てほしい」と話す。

料理や菓子作り、自然体験の企画などを手掛ける中谷さん=石川県珠洲市で

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石川・珠洲の中谷さん

手作り菓子販売や自然体験企画

お金に頼らぬ暮らし憧れ

 東京都出身で石川県珠洲市に移住した中谷なほさん(36)は「小さなおうち」の屋号で手作りの菓子や料理を提供している。

 沖縄県・石垣島のホテルで調理師を務め、国際協力機構の青年海外協力隊でアフリカに滞在。金沢大の能登里山マイスター養成プログラムを知り、2009年春に珠洲市へ。生活費は安く、困っていると助けてくれる土地柄。関心や世代の違う人と交わる機会も意外と多く、自分の考えや暮らし方を見つめ直せる環境も魅力だ。

 NPO法人「能登半島おらっちゃの里山里海」で自然体験の事業などを担当。アフリカで一家の父親がニワトリやヤギをさばき、子どもも手伝う様子を見た経験から、命を食べる意味を考えようと、野生のカモをさばく講座を企画している。

 田舎では食料を自給し、家を自分で修理する人も。「お金だけに頼らず、暮らしていく技がある」。そんな生き方に憧れている。

 担当 押川恵理子 ※次回は28日付Attention!。アニメの聖地巡礼を取り上げます。

 

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