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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

海外へ 社会へ 伝統へ 新行路に挑む

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 春は陽光を浴びて木々の芽が育ち、つぼみが膨らむ「はじまりの季節」。ここ北陸から新たな道に踏み出す若手がいる。海外に飛び出す若き陶芸家、震災ボランティアに励む新社会人、30代半ばで会社員から工芸家に転身する男性。道はさまざまだが、着実に歩もうとする思いは共通する。(担当・押川恵理子)

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鶴田星子さん

被災地支援輪結ぶ

 金沢大を今春卒業した鶴田星子さん(22)=富山県魚津市出身=は東日本大震災後、学生のボランティア団体「Volunteer Japan金沢」をまとめ、被災した子どもたちが笑顔になるおもちゃを送る活動などを続けてきた。

 2010年夏から半年、インド・マハラシュトラ州のプネー大に留学。治安の良い都市でも、物乞いは日常の光景だった。知識はあったが、実際に小さな子どもにお金をせがまれると、どうしていいか分からず、体がこわばった。

 貧困の現実を見たが、助けられない。帰国後、恵まれた環境に無力感すら覚えていたころ、震災が発生。海外志向が強かったが、国内の問題に目が向いた。大学の先輩と一緒に支援団体を設立。仮設住宅も数回訪れ、被災地と途上国支援の問題は似ていると感じた。月日がたつと、忘れられてしまう。

 春から富山県内の企業で働き、被災地の支援を続ける。福島県の子どもたちを夏休みに受け入れる活動に協力し、後輩が継いだ団体を見守る。「無理せず長く」が信念だ。

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岩村遠さん

米国の土と“格闘”

 ギャラリーの白い空間にニョキッと出現した恐竜。巨大な彫刻かと思いきや、陶芸作品だ。この「ツボラ」の生みの親、岩村遠(えん)さん(24)=京都府長岡京市出身=は金沢美術工芸大大学院を3月に修了。夏から渡米する。

 きっかけは、米国を代表する陶芸家の金子潤氏との出会い。2011年3月にネブラスカ州オマハの工房を訪ねた時、大作が並び、まるで美術館のような造りに驚いた。絵も彫刻もオペラの舞台制作も手掛ける金子氏。「これがグレートアーティストや」。米国でスケールの大きなアートビジネスを学ぼうと決めた。

 帰国後、日本独特の石垣や桜が以前よりも美しく、空の狭さすら魅力的に見えた。「海外に出てアイデンティティーが揺り動かされた」。外から日本を知る必要性も感じた。

 大学で専攻を選ぶ際「焼き物は世界中にあるからやっていくのが大変」と言われたが、言い換えれば「焼き物は世界の共通言語」。どこでも交流できると、陶芸の道に進んだ。手と熱で「えたいの知れないもの」を目の前に出現させる。土の自由さも気に入った。

 サウスカロライナ州のクレムソン大大学院に進学予定。美術で食べていけるのかと言われることも多いが、「美術をやるためにご飯を食べるという意気込み。チャンスはどこにあるか分からへん」。ぐんぐん進んでいく。

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坂井天心さん

象嵌装飾品で発信

 金沢市出身の坂井天心さん(37)は20年近く勤めた愛知県内の製紙会社を辞め、故郷の伝統工芸を継ぐ。

 加賀象嵌(ぞうがん)作家の坂井貂聖(てんせい)さん(68)の次男。カンカン、朝から晩まで金属を打つ父親の姿を見て育った。「ひたすらつくる。好きじゃないとできない」。自分には無理だと思っていた。

 英国のロックが好きで、音楽を志して高校卒業後に仲間と名古屋市へ。バンドを結成したものの、メンバーとの行き違いで解散。数年前から「帰ってこい」と父親に言われていたが、何も成し遂げられず、負けて帰ることが嫌だった。

 最近、大量生産の安価な商品を見るたび、工芸品が消えてしまうとの危機感が強くなった。苦労しながら、一代で加賀象嵌の工房を築いた父親への感謝もあり、一から学ぶと決めた。

 伝統工芸を身近に感じてもらうため、アクセサリーを中心に制作しようと考えている。「象嵌には可能性がある。世界に売り込みたい」

 ※次回は6日付Spot&Place。上れば気分も晴れ晴れ、さまざまな「屋上」を巡ります。

 20代の記者を中心とした編集部がつくってきたpopress(ポプレス)は、この春から30代をメンバーに迎え、「若手記者がつくるページ」として新たに出発します。

 切り口は5テーマ。Human Recipeは、さまざまな分野で個性を発揮し、活躍する人がどうやって今にたどり着いたかに迫ります。Spot&Placeは北陸を中心に面白いスポットを発掘して紹介。Work&Lifeは働き方や生き方を考えます。Attention!は若者の流行やサブカルチャー、アートなど幅広い話題を取り上げ、Love&Sexは恋愛や性をめぐる話題に切り込みます。

 石川、富山両県の若い記者と編集部が、新聞の「枠」を超えようと試行錯誤しながら生み出してきた紙面。これからも挑戦していきます。

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