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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

地域おこしで生き方探し 東京→小矢部市協力隊員に

特産のバラが所狭しと植えられたビニールハウスで手入れをする関野さん=富山県小矢部市で

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 仕事や将来に悩む若者を描き、昨年、フジテレビ系で放送されたドラマ「遅咲きのヒマワリ」。主演の生田斗真さんが演じ注目されたのが、地方の活性化のため都市部から移住して働く「地域おこし協力隊」だ。国の事業として2009年に始まり、現在全国で約470人が町おこしや農林漁業に携わっている。その中の1人、東京から富山県小矢部市に来た女性を取材。田舎暮らしを通じ自分なりの生き方、働き方を模索する姿を追った。(担当・奥野斐)

特産バラ育てる

 所狭しとバラが植えられ、胸上まで葉や枝が生い茂るビニールハウス。雪が降る屋外とは対照的に、春のような暖かな室内で黙々と枯れ枝を切り、集める。

 地域おこし協力隊員として2010年6月に小矢部市に来た関野亜紀子さん(36)は、週5日の勤務のうち3日を、特産のバラを生産する遠藤園芸で作業している。「痛いと思ったらとげが刺さっていたこともあるんですよ」。笑いながら、慣れた手つきで枝をまとめていく。

 隊員は、進学や就職、結婚などで地元を離れる若者が増え人口減少が続く市が、定住促進策として10年度から2人を受け入れている。仕事は各自治体でさまざま。担当者は「ヨソモノ、ワカモノ目線のアイデアを期待した」と導入の経緯を話す。

町の魅力伝える

 関野さんの“任務”は「小矢部ブランド」と銘打った農産物、特産の生産加工に携わり、PRや情報発信をすること。都市との交流事業の企画・運営にもかかわっている。週1日は庁内で市報やブログの執筆、催しの準備にあたり、残りの1日はニシンのこうじ漬けやかき餅、いり菓子などの加工販売を手掛ける田悟(でんご)農産で働く。

 「あっこちゃんは積極的に方言を使ったりして、地域に溶け込む努力をしとるよ」と受け入れる田悟敏子さん(61)。かつてここに研修に来た若者の中には、冬の厳しい気候や、理想と現実の違いを理由に途中で帰った人もいたという。

【左】田舎の良さを残す小矢部。雪国の暮らしに慣れていない人にとっては冬の寒さは厳しい【中】市役所で小矢部の情報発信やPRにもあたる。ブログも積極的に活用している【右】特産品の出荷作業。方言で話すなどして地域の人の間にとけ込めてきたことを実感

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「田舎が合ってる」

 千葉県船橋市出身の関野さんは短大卒業後、東京で約10年間、パート、派遣社員、正社員として事務職に就いた。社会人として一歩を踏み出したころは、いわゆる就職氷河期。社員のイスは得られず、パートで経験を積み派遣会社に登録した。

 その後一度は正社員になったものの、「田舎で人と触れ合いながら、直接人の役に立つ仕事がしたい」と思うように。3年ほど前に新聞で隊員のことを知り「今しかない」と応募。当時募集していた小矢部市に書類を出し、選考をクリアした。

 友人も知人もいない土地で、最初は寂しさや仕事のギャップも感じた。「こっちの人は町おこしというと何かを作りたがるけど、都会からきた私にはありのままの自然がいい」

 昨年10月には、自ら提案し、参加者がマラソンしながら町の魅力を再発見するイベントを開催。若者ら約20人が参加し、第2回に向け計画も動き始めた。

 住んでみて「田舎暮らしが合ってる」と実感した。任期は3月までだが、今後も小矢部に定住できればと希望している。「空気が澄み切ったこのきれいな景色と、人の温かさをPRしていきたい」

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背景に就職難

自治体は若者定住期待

 地域おこし協力隊事業は総務省が約4年前に始めた。人口減少や高齢化に悩む地方の自治体が、都市部から人を受け入れ、町おこしや農林漁業、住民の生活支援などをしてもらいながら定住・定着を目指している。しかし、実際は隊員の約8割を20代と30代が占め、その応募動機には「職に就きたい」という切実な声も多い。背景には若者の厳しい雇用環境もあるようだ。

 同省の労働力調査によると、25〜29歳の失業率は2009、10年と7%に達し、全年齢の平均5%を上回った。フリーターや派遣社員など非正規労働者の割合も25〜34歳で増加傾向にあり、全体の4分の1を占めている=グラフ。この状況を反映してか、この事業をキャリアパス(仕事の経験やスキルを積む機会)と考えている隊員、自治体も少なくないという。

 隊員は、昨年7月1日時点で173の自治体に473人。現在、石川県内に1人、富山県内で4人が活動している。任期は1年以上、3年程度で、隊員の給料はおおむね月16万円。そのほか活動費もあり、年間計350万円が特別交付税で措置されている。隊員の定住率は2011年度の終了隊員で約7割。就農や地元企業への就職が多く、起業した人もいた。

 ※次回は12日付Attention!「世界と絵はがき交換」を特集します。

 

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