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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

若者の「うつ」は今(下) 復職へ 第一歩  

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 入社して数年で、心の病を患ってしまったら…。長い会社人生、再び元気に働けるかどうかは本人も周囲も不安が大きいところだ。うつ病などメンタル疾患の増加に伴い、ここ数年、北陸でも会社を休んだり辞めたりした人の復職・再就職をサポートする動きが広がってきた。若者のうつの実態を紹介した前編(24日付朝刊)に続く後編は、支援の現状と受け入れる企業側の“本音”を探った。(担当・奥野斐)

支援の現場

仲間と訓練、段階踏み進む

 ビルの中の、オフィスをイメージした一室。10〜50代の男女約20人が、2人1組で机の上のノートパソコンに向かっていた。講師の指示を聞き、隣の人と話しながら課題をこなしていく。この日の目標はメール設定を覚えることだが、質問や会話など職場でのやりとりの練習にもつながっている。自分の失敗を笑ったりと、和やかな空気が流れていた。

 ここは、うつ病など心の病を患う人や、精神の障害がある人らが就労を目指して通う金沢市広岡の事業所「ヴィスト金沢センター」。利用者は毎日か週数日ここに“通勤”し、パソコンやコミュニケーションの訓練、グループワーク、企業実習などに取り組んでいる。利用料は前年度の所得に応じて最大で1日800円程度。石川県ではまだ少ない、株式会社が運営する施設だ。

 就職してすぐに精神疾患になり、退職後、このセンターに通う20代男性は「自分の症状を考えると、いきなり再就職はハードルが高かった。会社との間に入ってもらい、段階を踏んで仕事に戻れるのが心強い」と話す。

 今年9月に開業した奥山純一さん(28)は、人材派遣会社の勤務経験を生かし、企業に直接働き掛けるなどして実習先や求人を開拓。本格的に運営を始めてから約3カ月で2人の就職を決めた。「病気の特性をふまえ、配慮してほしい点を明確に伝えれば、能力を発揮できる人は多い。地域と連携しながら、定着できるよう支援を続けたい」と話す。

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 同様の就職支援や休職者向けの復職サポートは、各県にある独立行政法人の障害者職業センターのほか病院、NPOなどにも広がっている。石川障害者職業センターでは、すでに会社を辞めている人とは別に、うつ病などで休職中の人を対象にした「リワーク支援」を2005年度から実施。会社から復帰前に紹介されて利用する人が多く、20代も目立つという。センターでは、作業訓練をしたりストレス対処法を身に付けたりする。職場環境の調整もしている。

 病院でも、独自の職場復帰プログラムを設けるところが増えている。石川県内では現在、少なくとも精神科を持つ3病院が実施。病状や目指す職種によって、受けられるサポートの選択肢は充実しつつある。

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「ブラック企業」が休職呼ぶ

 そもそも休職者は増えているのだろうか。厚生労働省の調査では、メンタルヘルス上の理由で1か月以上休業または退職した労働者がいる事業所の割合は、7.3%(2010年)から9%(11年)に増加。労働者や企業の人事担当者から石川県のメンタルヘルス対策支援センターに寄せられた相談件数も、開設された3年前から増え続け、昨年度は846件に上っている=グラフ。

 若者の雇用・労働相談にのる東京のNPO法人「POSSE(ポッセ)」事務局長の川村遼平さん(26)は「まず同じ会社に復帰していいのか、病気の要因や職場の状況を見極めることが重要」と話す。劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」の問題を挙げ、「中には、自主退職を迫るあまり結果的に社員をうつに追い込むケースや、人員削減の結果、従業員に過労を強要してうつになりやすい状況にしているところもある」という。

 ブラック企業ではなく、甘すぎる若手「シュガー社員」が悪いという論調もあるが、川村さんは「非正規雇用が進む中、正社員にはサービス残業を自発的にすることを求める会社も多い。職場自体が余裕を無くし、その中で若手も犠牲になっている」と反論する。

ヴィスト金沢センターでは、グループワークの一環で、「働くとは」というテーマで利用者がいろいろな考えを出し合った

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北陸の企業 対策遅れがち

 石川、富山では都市部のようなひどいケースは一見ないようにみえる。だが、「北陸は、うつ病などになっても会社にいわずに退職していく若い人が少なくない。心の病の問題がまだ顕在化していないだけ」と、企業のメンタルヘルス対策を請け負う株式会社プログレス(富山市)代表の西昭洋さん(36)は指摘する。

 同社は、北陸では珍しい「EAP=Employee Assistance Program」と呼ばれる米国発の従業員支援プログラムを提供。企業研修やカウンセリング業務など提携する会社は50社に上るが、「リスクマネジメントとして対策を講じようという意識はまだまだ浸透していない。水面下で困っている企業は少なくないが、何か事が起きてから取り組むところが多い」と語る。

 厚労省は昨年、うつ病を含む精神疾患を国の医療対策で特に重点を置く「五大疾病」にする方針を決めた。ますます対策が急務になっているが、現状は復職支援を見てもそれぞれの施設がバラバラにやっている感は否めない。医療機関と企業、支援施設など従業員のメンタルヘルス対策に携わる機関の連携が求められている。

 

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