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popress【Work & Life】働き方や生き方を考える
 

若者の「うつ」は今(上) 広がる 心の病

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 軽いうつ状態から長引く精神疾患まで、メンタルの病気になる人が増えている。うつ病だけでも、厚生労働省の調査で患者数は104万人(2008年)に上り、10年間で2倍以上に。若者でも多く、特に従来では見られなかった、仕事はできないが趣味や遊びはできる「新型うつ病」が目立つという。不況の中、過重労働やストレスなどから広がる心の病。2回にわたり実態に迫った。

「空気読め!」孤立感

 「まだこんなこともできないの?」「仕事の覚えが悪い」「何を考えてるのか、分からないんだよ」−。

 石川県在住の女性(26)は3年前、勤務していた職場で怒られ、注意され続けてうつ状態になった。仕事は窓口応対や書類作成などのデスクワーク。自分では業務のやり方や目的が分からず先輩に尋ねているのに、「そんなこと聞くな」「空気を読め」と言われた。細かいミスが重なり、孤立感を深めていった。

 学生時代は優等生だった。「まさか自分が仕事劣等生だなんて…」。次第に朝も起き上がれず、吐き気や胃腸の不調が出て仕事を休みがちに。うつ病だと思って精神科を受診すると、初めて発達障害の疑いを指摘された。

 もともとアスペルガー障害があり、それによって職場に適応できずうつになっていた。

 その後休職。体調は今も芳しくなく、大人になって突きつけられた障害と向き合う日々。「自分の特性を生かせる仕事に就きたい。模索中です」と話す。

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不安感につぶされ

 金沢市の20代男性も大学卒業後、製造業の仕事に就くと同時に不安感に駆り立てられる「強迫性障害」になった。きっかけは、社外秘の文書を手にしたこと。「大切な資料を落としたらどうしよう」との強迫観念が生まれ、道に落ちているものが気になって確認しないと済まなくなった。

 一見して書類ではないと分かるたばこの吸い殻や石でさえ、拾ってつぶさないと落ち着かない。「自宅まで自転車で20分の距離に1時間半かかるときもあった。苦しかった」

 心療内科で診断を受け、一度は休職した。復職を目指したが、職場に戻ると症状が再発し、退職。症状がだいぶ軽くなった現在は、就職を目標に支援施設に通っている。

「発達障害」「新型」…従来と異なる症状

医師「早めに気付いて」

 就職を機に心のバランスを崩した2人。若者の雇用・労働問題に取り組む東京のNPO法人「POSSE(ポッセ)」の調査では、厳しい雇用情勢を反映してか、入社前の就職活動ですでに7人に1人が「就活うつ」だとの指摘もある。たとえ会社に入っても、効率化や合理化で正社員に負担が重くのしかかる。劣悪な労働環境を強いる「ブラック企業」も少なくない。

 うつ病は本来、中高年に患者が多い病気。だが、金沢こころクリニック(金沢市広岡)の浜原昭仁院長(55)は「最近は20〜30代も増えている」と実感する。目立つのは、従来の症状に当てはまらない非定型の「新型うつ病」や、先の女性のような発達障害が要因のうつ。そのほか、極端に明るく活動的なそう状態と、意欲がないうつ状態を繰り返すそううつ病の一種「双極性II型障害」も広がっている=表<1>。

 傾向として病気にまで至らない、より軽い「うつ状態」で受診する人が多い。中にはネットの簡易診断をして「うつなので休みをください」とやってくる人も。新型の場合は診断基準が定まっておらず、医師によって見方が分かれるのが現状。浜原院長は「休職中に飲み会や旅行に行きながら仕事はできないという人は、怠けやわがままと見られがち。ただ、通常より意欲や集中力、気力が落ちているのは間違いない」という。

 また、大学生のカウンセリングなどに携わる金沢大保健管理センターの伊藤大輔助教(29)は、先の男性のような強迫性障害やパニック障害、社交不安障害などの「不安障害」も若者に広がっていると感じている。「患者自体が増えたのか、病気が知られた影響で増加したのかは分からない」としつつも、「対人関係を異様に気にしたり、強い不安を抱えている学生の中には、うつ病を合併する人も少なくない」と話した。

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 うつ状態に早く気付くためのサインはあるのだろうか。浜原院長は五つのポイント=表<2>=を挙げ「環境や気持ちの大きな変化、大切なものを失う喪失体験などが要因になる」と説明する。季節も関係するといい、「北陸より日照時間が長い関東地方ですら、冬になると約1割の人が落ち込んだり気分が優れなくなるという報告もある」と話す。

 治療法は現在、主に薬物とカウンセリング療法が中心。「薬の開発が進み、心理療法も普及しつつある。早く気付いて治療を受ければより回復につながります」と強調した。

  担当・奥野斐 ※次回は28日付Work&Life。「若者のうつは今 後編」です。

 

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